エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

E U P H O R I A 永遠の: 真夜中の招待状 (2019) - スラッシュウェイヴ、とこしえのドロ沼

《Slushwave》、スラッシュウェイヴとは何か? それはヴェイパーウェイヴのサブジャンルかのようであり、だいたいのところ、やたらに長くてモヤモヤ〜っとした音楽(もどき)が、そう呼ばれる。

その想像される作り方は、おおむねこのよう。何かてきとうに古びたJ-Pop・アニメソング・R&Bなどのサンプルら、それらをほどよくスローダウンした上で延々とループ、かつリバーブイコライザーで音質をモヤつかせる。気が向けば、フェイズシフター等をも併用。

その結果デキてしまうトラックたちは、短くても5分あまり、長ければ30分以上ものスケールを誇る大物に。この手法およびスタイルの創始者は、かの栄光に輝くヴェイパーヒーロー《t e l e p a t h テレパシー能力者》)だとされている。

ちなみにスラッシュの“slush”とは、雪解けのあとのグチャグチャ、ぬかるみ、泥土などのことを言うらしい。やおいの“slash”、メタルの“thrash”とは違う。

──といったことなんだが、けどオレは思いましたね。いやこの記事は、前に書いた「テレパシー疑惑の深まり」()うんぬんの、アフターケアというかあと始末なんスけど──。

どこの誰ともつかぬ連中が、安易な手法でデッチ上げた音楽(もどき)たち。たとえそのデキがイマイチでも、2分間くらいで終わってくれたなら、「まーいーか」とも思える。
がしかしそれらが、短くても5分あまり、長ければ30分以上もの雄大で壮大なるスケールを誇ってくれたひにはっ……!!

前の記事で名前を挙げた《テレパシー疑惑系》ヴェイパー者たち、その作品らをチェキしてて、スイマセンが、ほんとうにそう思っちゃったんだよね。〈いちいち長げェーよ!〉、とね。いやイイ部位も、なくはないんだけど。
かつまた、多少マジメに聞いてみたなら、このスラッシュのかいわいに、《テレパシー疑惑》もクソもねェ。ただ単にテレパシーさんという大スターにあやかりたい者が多いというだけで、品質的にはご本家と、だいぶ差がござるんでないかい、とも。

がしかし? こういう壮大なるしれモノであるスラッシュウェイヴ、だがそのウゾウムゾウらをも含め、びみょうに流行り気味であることに、一種の必然性があるのか、という気もするんだよね。

というのも。つべやニコ動らの動画サイトらには、「n時間耐久〜」とか称する、同じ楽曲を延々とリピートしまくりの音楽動画らが大量にうpられている。短くても1時間、長ければ10時間も、延々〜とヤッてるらしいモノたちが。
〈何ソレ分かんねェ〉と自分は思っちゃうんだけど、しかし動画それぞれの再生回数に、かなり多量のものがある。であれば、これがまた流行りなのかな、と考えざるをえない。

動いているけど停滞している、ぬかるみのドロドロ気分。なぜか現在、そういうフィーリングが好まれる傾向があるのだろうか? そして、われらのスラッシュウェイヴもまた。

と、いうところでご紹介いたしますのは、《E U P H O R I A 永遠の》)および《Infinite Love》)というスラッシュ系バンドたち。

このふたつは同じ人によるユニットで、2019年から活躍中。それぞれ手法はあまり変わらないが、しかしネタ選び(sample curation)の方向性が異なる。
ユーフォリアの使う素材はスムースジャズR&Bなどで、世俗性を志向してるふう。いっぽうインフィニットのほうは、ニューエイジっぽいチルアウトみたいなネタを用い、《宇宙的な愛》か何かを表現しているつもりのよう。

そうして〈同じ手法〉とは、まず素材らを、いきなり半速近くまでスローダウン。するとサンプルが何であれ《アンビエント》っぽい響きになるので(!?)、あとはおなじみのヴェイパー処理により、マイルドに調整。

で、そんな手法らでデキてしまった楽曲たちが、ひじょうにイイなどと強弁する気もないんだけど。しかし……。
でもこのような、〈動いているけど停滞しているぬかるみドロドロ〉の世界にひかれる気分が、自分の中にもなくはないな──と、確認させてくれるくらいの何かインパクト。それを悔しいが、つい感じさせられちゃったんだよね。イエイッ