エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

モールFUTURE/PAST: Christmas at Crystal Valley Mall (2015) - 永遠(とわ)なる幻影のXマスタイムへ

ヴェイ? いや、メリークリスマス!…という気持ちは別にないんだけど、まあシーズンのものなので、クリスマス向けのヴェイパーウェイヴをご紹介。

《モールFUTURE/PAST》はなぞに包まれたヴェイパークリエイターであり、2015年にアルバムを2コだけ出して、それきりシーンから姿を消しているもよう。東京在住みたいな情報を残しているけど、うそかまことか…()。
ともあれ、そのアルバム2コが、いずれもモールソフト(Mallsoft、スーパーのBGM風なヴェイパー)の傑作。とくにクリスマス向けミニアルバムの評価が高いらしく、Bandcampのモールソフト部門のベストセラーの1ページめからランクを落としたことがない、自分の見てきた限り。もう、ずいぶん前の作品なのに。

そしてクリスマスアルバムといっても宗教とかはぜんぜん関係がない、チープにきらめく宣材らで飾りつけられたクリスマス商戦の売り場のムード、その再現、みたいな音楽。モールソフトの性質からいって上げる方向はないわけだが、しかしリラックスさせたついでに、サイフの紐も緩めてもらおう、という商魂がふんぷん(?)。

でまあこれらの推定される作り方が、ほとんどリバーブかけただけ、そんなに細工してないような感じ。ピッチの落とし方が遠慮気味なので、もとの素材のイージーリスニング/スムース・ジャズらと、聞いた印象があまり変わってないのではないか…と考えると、何かヘンなスリルを逆に感じさせられる。まさかまじめにイチから作ってはないだろう、と邪推するんだけど。
ただしクリスマスじゃないほうのアルバム(Welcome To Crystal Valley Mall)については、響きが甘いだけでなく、ときどき音楽がつっかえたりズッコケたり…()。すると、目の前の華やかなモールがほんとうにあるものなのか、実は幻影、過去に見た眺めの脳内再現にすぎないのでは…といった不安が、ソロリソロリと忍び寄ってくる。ま、モールソフトって本来そういうものだとは思う、そこまで行くための手段はいろいろだが。

あとついでにもうひとつ、クリスマス向けヴェイパーのオムニバス「V.A.: Pacific Plaza Records - It's a Vaporwave Christmas!」(2018)、これをご紹介。いや実はこのアルバム、ついさっきRedditで人さまのかきこを見て知ったばかりなんだけど、しかしナマものなので至急にネ!

で、いま初めて聞きながらこれを書いてるという、ドロナワそのものの事態だが。でも何か、フューチャーファンク(ディスコファンク風ヴェイパー)の「ファンキークリスマス」とか、ワム!の「ラスト・クリスマス」を初音ミクが唄ってるという(触れ込みの)やつとか、どうなんだろ…。
作り手が有名なやつでは「TVVIN_PINEZ_M4LL: ホーホーホー w h a t e v e r」なんてのがあるが、しかしなぜだか、後半から楽曲が「マイ・フェイバリット・シングス」になってしまう不可解な構成。あれクリスマス違くない?
それと…皆さまお待ちかねのっ! あの何とか達郎氏に巨万の富をもたらしているかも知れないアレも入っているが、しかし作りがすなおすぎ…のように自分は思うけど、でもここまでの超大ネタであれば、こういう処理でよいのかも。

いやあ、そもそもクリスマスに興味がない自分が、こんなん聞いてんのがおかしいのか。《モールFUTURE/PAST》くらいのハイレベルなブツなら、また別だけど。…でもこっち全21曲も入ってるので、中にはきっと貴方のお気に召すナンバーが!?