われらが永遠のヒロインであるラヴリー貞子さん or キューティ伽耶子さん、それと似たような人が、廃校らしき建物の廊下に出現しているスリーブアートがチャーミング。チリのバンドである《Filmy Ghost》による“Japanese Horror Tales”(2018)は、日本の怪談をテーマとしたダークアンビエントのアルバム。
これは、あまり話題にもなっていない作品であるかと見受けるが。とりあえず聞いてみたら意外とデキは悪くなく、それらしいムードは十分に出ている。
ただし少々聞きづらいところもあるし、またダークアンビエントの入門編としては、スティーヴ・ローチの名作ら(☆)あたりをオススメするけれど。
さてこのアルバム“Japanese Horror Tales”に収録された曲ら、そのタイトルは、日本の怪談というテーマにそって「リカちゃん」「テケテケ」「お岩」「メリーさん」…等々とあり、また冒頭曲の“No Face”とはノッペラボーのことか《カオナシ》のことか。ともあれ、そのあたりまでは分かる。
しかし気になったのは、「ヒムロ・マンション」とか「ヨシムジさん」とかいう耳慣れないことばが使われた曲名ら。そういうタイトルで呼ばれる怪談らが、存在しているのだろうか?
そこら調べてみて、ばくぜんと分かったこと。ワールドワイドのネット世界では「日本人の知らない日本の怪談(または都市伝説)」というものがけっこう語られており、「ヒムロ・マンション」や「ヨシムジさん」などは、その好例であるらしいのだった。
その内容ら、ざっと見た感じ、「ヒムロ・マンション」は古典的で伝奇的な呪いの館が東京の一隅に存在するというお話(☆)、「ヨシムジさん」は、若い女性がSNS経由でものすごいストーカーと出遭ってしまうお話(☆)……くらいに思えたが、あまり確信はない。
こういうことをちゃんと調べ上げたら、日本人でない人々がいったい日本をどうだと考えているのか、それをまた別の角度から知ることができたりして、少々興味深いかも知れないけれども……。
かつ、ヒムロ・マンションを直訳し「氷室 邸宅」として検索すると、2001年発売の和風ホラーゲーム「零~zero~」(PS2用, テクモ)に関連したページらがヒットしてくる。
そこから臆測をよくすると、そのゲームに登場する呪いの館《氷室邸》が、実在するものと海外の人らに誤解され、そして伝説へ…と化しちゃったのか、という感じが出てくる。そんな誤解ってできるものなのか、とは思いつつ。
まあどっちにしろ。ダークアンビエントの中にはホラーゲームやホラー映画のスコア(伴奏音楽)みたいなサウンドという行き方が厳然と存在し、そして今作“Japanese Horror Tales”もまさしくその中のひとつなので、ここで話はみごとにつながった、と言えなくはなさそう。
追記とおわび。「日本人の知らない日本の怪談(または都市伝説)」とブチ上げてしまったが、「ヒムロ・マンション」はそうかもだけど、しかし「ヨシムジさん」は日本語の世界でも有名なお話だったみたい……すまぬ、すまぬ。
何せ「ヨシムジさん」の物語は、かの文聖・並木伸一郎センセの崇高なるご本にも紹介されているとあっては、知らざりしことを恥じるしかない。いや、《ヨシムジ》という語の異様な響きにエキゾチックさを感じ、いかにも外国から見た和風っぽいなと、かんたんに早合点して……!