エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

Somar Sevleuh: Ateak(2018) - ぶっとばしてやれッ、ハードミニマルドライブで!

テクノの世界のハードミニマルというサブジャンル、自分なんかも往時はずいぶん、というか死ぬほどハマったものだけど、だがそれもすでに前世紀のお話。…いまはねェ、ほらもォ軽くネ…とか何とかで済ませたいところだが。
しかしそこへ久々にガツン!と熱いのを喰わしてくれたのは、Somar Sevleuhによるトラック「Ateak」。人の声の要素のないインスト曲であるにもかかわらず、「ふざけんなッ!」という血の叫びが、その押し殺したような強迫的サウンドの中にはっきりと聞こえたような気がした。怒りを忘れ、地下抵抗の精神を失い、商業化されて形骸化したテクノやミニマルらに対して突きつけられた兇器なのだろうか。

さてこのSomar Sevleuh(ソマー・セヴルー?)というプロデューサー、本人のSoundcloudページ()を見るとバルセロナの人だそうが、しかし名前がおそらくスペイン風でない。だが国籍などはどうでもいいとすれば、「近年の地下テクノはラテン諸国、スペインや南米あたりがキテる」という自分の認識が、ちょっとまた肯定された形。
で、そのSoundcloudページで彼の制作したトラックがいっぱい聞けるけれど…。しかしビックリさせられたのは、オレを震撼させた「Ateak」と異なって、バスドラ(bass drum)がまっとうな四つ打ちじゃない曲がやたらと多い。

薔薇の香りとやすらぎを、ここで貴方に…

この話、通じるだろうか。ディスコ系ビートの「基本バスドラが四つ打ち」という特徴は、1960年代のモータウン等のR&Bに始まり、追ってファンクディスコ、ハイエナジー、ハウス、そのついでにテクノやトランス、等々…と継承されてきた、現代的ダンスミュージックのパスポートみたいなもの。
で、あえてその伝統に逆らい、バスドラを不規則に「ドッ…ドドドッドッ」だとか「ドドドッ…ドドッドドッ」などと、ヘンにひねった鳴らし方ばかりしているSomar Sevleuh。いちばんさいしょに見込んだ通り、その反骨精神はすばらしい。だが、たぶんやりすぎているところがある。

そういう曲はめったに悦ばれない、と、多少は死ぬ気で長年テクノを聞いてきた人(ら)は知っている。売れるとか売れないとか以前に、地下テクノシーンでさえ歓迎はされないものだ、と。
なおディスコ系とは違う側に、ヒップホップやドラムンベースらが使っているファンク系のビートがあるけれど、しかしSomar Sevleuhによるいびつな変則ビートは、そっちの流れにも入らない。「この曲は4拍子なのだろうか否か?」などと疑問を抱かせるような作り方は、ダンスミュージックではよくない。

がしかしまあ、そういうのを積み重ねてきた上での近作「Ateak」だったというストーリーが考えられるわけで、今後はそのように、あまり効果のないところでの抵抗は廃し、かんじんなところでズバシィ!とイッてくれるはず。オレは彼の中の怒りを信じる。


おことわり。Somar Sevleuh“Ateak”についてはYoutubeの動画も存在しているが()、なぜかその音質がめたくそヒドい。モコッちゃって。それで仕方なく、冒頭90秒くらいしか試聴できないが、まだしも音がいいBeatportのページを冒頭ではご紹介した。