エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

言論・思想・報道・表現、そしてヴェイパーウェイヴの自由に加担したくあります。

どういうところか私はよく知らないのですが、《Pornhub》というウェブサイトが人権ゴロか何かの追い込みを受けて弱っている、と伝えられています。
(ご注意:未成年の人は、見に行ってはならないところらしいです!)

思想・言論・報道・表現の自由に加担しようとする私どもは、何となくこのハブを応援したい感じです。
ということで何となく、このポルンハブのロゴのパロディを作成しました。どういう意味で応援になっているのかは、分かりません?

それに、作成と言いましても。

さいしょ、画像ソフトでやりましょうかとした。しかし、スクリプトか何かで、かんたんにこのパロディロゴを作れるサイトが見つかりました()。

さすがはミーム大国のアメリカ(か、どこか)です!

しかし、まあこんな……。ポルンハブも気の毒ではあるのですが、そのいっぽうではイランで12月12日、反体制ジャーナリストのルホラー・ザム氏が死刑を執行されています()。
これに私は、自分の一部分が殺されたような気がしました。大げさですが!

何を言い、何をしたらいいのでしょう? 私に分かっていることは、これらを放置した場合、いずれ私たちのヴェイパーウェイヴが攻撃をこうむるのは確実、ということです。
それも、そう遠くはないうちに──。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
I don't know much about it, but it is reported that a website called "Pornhub" has been weakened by human rights gangs or something.
(Warning: minors are not allowed to visit this hub)

Freedom of thought, speech, press, and expression. We, who are trying to be part of them, feel like supporting this hub somehow.
So, I made a parody of the Pornhub logo. I don't know what it's supposed to support?

And when I say created, I mean ...

At first, I tried to do it with image software. However, I found a site where you can easily create this parody logo with a script or something.

That's America (or somewhere else), the meme superpower!

But, well, such is ... I feel sorry for Pornhub, but on the other hand, on December 12, the dissident journalist Ruhollah Zam was executed in Iran.
This made me feel as if a part of me had been killed. I am exaggerating!

What can we say and do? What I do know is that if we let these things go, our Vaporwave will eventually come under attack.
And it won't be long before they do.

ROMBREAKER: Summer Pain (2020) - 夏はすべてを与え、そして奪う。

《ROMBREAKER》、ロムブレイカーは、スイスの人だと称しているヴェイパーウェイヴ・クリエイターです。おそらく2017年から活動中のようです()。

この2020年にアルバムを7コ発表するなど、ロムブレイカーさんは生産性の高いアーティストです。
それらの中にはIDM風やチルハウス的なスタイルのものがありますが、主要部はクラシックヴェイパーです()。じっさいその部分が、彼のもっとも美味なスイートスポットだと考えられます。

そして、“Summer Pain”はロムブレイカーさんの、最新に近いアルバムです。全6曲・約35分を収録しています。
そして彼が崇拝している《haircuts for men》に近いスタイルで、そこには、夏の日の想い出たちと、そして苦い悔恨が表現されています。秀作です!

ところでこのロムブレイカーさんの作品らには、少しまた別の特徴があります。
それは、〈他のヴェイパー音楽に比較し、なぜか音が大きく聞こえる〉ということです。

ROMBREAKER: The Leftover (2019) - Bandcamp
ROMBREAKER: The Leftover (2019) - Bandcamp
↑第4曲の視覚化。凸凹のない海苔波形です!

分析してみたところ、彼の作品らは、マスタリングあたりの段階でコンプレッサー等がきつめにかけられているようです。通常のヴェイパー音楽家たちは、ここまで強い処理をすることが多くありません。
また、この処理が極端さをきわめると、俗に《海苔波形》と呼ばれるサウンドができてしまうことを、多くの皆さんはご存じでしょう()。じっさいロムブレイカーさんの昨年のアルバム“The Leftover”は、みごとな海苔波形のトラックらを含んでいます。

そして、海苔波形によって象徴される《音圧戦争》の悪評を、多くの皆さんはご存じでしょう。じっさい“The Leftover”はやりすぎで、少々気分の悪いサウンドになっていますかも知れません。

しかしその極端さを克服した上での、ロムブレイカーさんの現在です。彼のことしのリリースらは、不自然にならない限りで音圧を増やすことに成功していると考えられます。
じっさい巧妙で、どういう処理をしているのか尋ねて、私が参考にしたいくらいです!(笑い)

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
ROMBREAKER is a Vaporwave creator who claims to be a Swiss person. Probably he has been active since 2017.

Rombreaker is a highly productive artist, with seven albums released in 2020.
Some of them are IDM-style or Chillhouse-style, but the main part is the Classic Vapor. In fact, that part is considered to be his most delicious sweet spot.

And “Summer Pain” is Rombreaker's latest album. Contains a total of 6 songs, about 35 minutes.
And in a style similar to haircuts for men he worships, it expresses the memories of summer days and bitter regrets. It's an excellent work!

By the way, the works by Rombreaker have a little different characteristics.
That is, “For some reason, the sound sounds louder than other Vapor music”.

When I analyzed it, it seems that his tracks are processed quite strongly by a compressor etc. at the stage of mastering. Ordinary Vaporwave musicians don't often do this hard.

Also, many of you know that if those processes become extreme, it will result in a tragic battle commonly referred to as the "Loudness War". In fact, his 2019 album, “The Leftover”, may sound a bit sick because it's too extreme.

However, after overcoming that extreme, Rombreaker is now. His latest releases are believed to have succeeded in increasing loudness as long as they don't sound unnatural.
It's really clever, and I'd like to ask him how to and use it as a reference! (Laugh)

2nd cłαss mαidәns: パラドキシ力ル hearꚍꚍhrob (2020) - 見つめあいたい

私は毎日あなたの夢をみています。
この現実をねじ曲げて、あなたが私を愛するようにしたいと思います。

I dream of you every day. I want to twist this reality and make you love me.
Made up a Vaporwave track from a song of a forgotten idol group. (○゚ε^○)V peace!

かわいい(らしい)アイドルグループの唄から。なお、このトラックはテンポが80BPMなので、オレのアレしてる中では軽快さがきわまり、お調子のいい曲であるハズっス!

まあそれでも素材のスピードを、60%くらいまで、ズズズ〜イと落としとるんやけどなブヘヘヘヘ。

ところでヘンなこと言いますが、シロートくさい少女たちのコーラス、って素材に興味があるんだ。
たとえば、女子校の朝礼の校歌斉唱みたいな響きが好きなんだよね。そのお話は、またいずれしてしまうことになりそうだけど。
そしてコレのもと曲も、ちょっとソレ風なので悦びがあった!

This Heat: S.T. (1979), Live 80/81 (2006) - AからZに移動しました

むかしのレコードの〈ジャケ買い〉なんて、たぶん失敗してる例のほうがぜんぜん多いんだけど。
しかしアタリを引いたときの悦びがあまりに大きすぎて、いま言う《認知のひずみ》を生じさしている、と考えられる。〈ジャケ買いはアリなのだ!〉、とね。

そして、ジス・ヒートThis Heat)のセルフタイトルの1stアルバムは、自分にとってはその最大のアタリであり続けるんだろう。
それをレコ屋で見た瞬間、〈ふんいき的に、何かキテそう!〉と即断し、とくにどういうものか知らないまま買ってしまったものだったが。

それが……。

いちおうご説明するとジス・ヒートは、1976-82年に活動していたイングランドの3人組バンド。そのメンバーたちは、プログレというかアートロックみたいな方面で、その前から多少活躍してたような連中だった()。
それが当時のパンクロックの《熱》にあてられてか、パンク的な意識と衝動をベースとしつつ、それを超えたふかしぎな未曾有のポップの領域に踏み込んでいったんだ。
その楽曲らがおかしいだけでなく、おそらくジャマイカのダブの影響により、非常識なエンジニアリングの乱用悪用におよんでいるところも、その大きな特徴。

そしてバンド名が“Heat”と熱のあることを言いながら、そのサウンド“Icy”──氷のよう、という表現が定着した。そもそもグループの使用していたスタジオ(どうせ自宅の地下室か何か)が、〈コールド・ストレージ/冷たい物置〉と命名されていた。

まったくもって名づけのしようがない、独自で固有の《ポップ》。これは一種の形容矛盾だろう。
なぜって《ポップ》は、キッチュであってミミックだから。似たようなものが大量生産されるからこそ、ポップはポップなんだ。

だのに、ジス・ヒートの音楽をサイコーの意味での《ポップ》だと呼んでおきたいのは、受け手の幻想と共犯関係をつないでいこうとするような甘さが、ぜんぜんないから、とも言えるし。
またユニークである《表現》が、たちまちその場で凍りついた、外在的でモノ的である《ポップイメージ》へと変わりゆくような離れワザを魅せたから、とも言えるし。

AからXに移動しました
この福祉国家は私たちの進歩です
そのすべてのサイズは私たちを運びます
より多くはより良く、それは私たちが望むものです
私たちのエネルギーは無限大です
必要なときにそこにあります
私たちは仕事に男性を持っています


AからZに移動しました
この核保有国は私たちの終焉です
ピーターを飛ばし、ポールを隠します
地球が燃え、粉々になり、そして死ぬのを誰が見ることができますか?
フェイルセーフ、絶対確実、私たちは以前にそれを聞いたことがあります
良識が必要です
男性が仕事に就いていることを願いましょう


This Heat “A New Kind of Water” (1981) 〜

ジス・ヒートは、それ自体が矛盾だった。ヒートかつコールドだった。不安定さをきわめた量子状態みたいなものだったんだろうか。そういうワケで、このバンドは短命であり、本格的なアルバムは2コしか残していない。
そんなだったジス・ヒートに対し、そこからの影響を指摘されるソニック・ユースあたりは、きわめて安定した前衛ちっくなポップソングらの量産体制を築いている。これが通常一般のポップ営業活動、ジ・エンターテインメント。それはそれでいい。

そういえば。付言しとくとジス・ヒートの時代に出てきたキーワードオルタナティヴ》、これは本来、ロックから出てきてロックから出て行く、それを棄却する、そういうムーブメントを言った。
そういう勢力の筆頭がもちろんジス・ヒート、そしてスロッビング・グリッスル、パブリック・イメージス、レインコーツあたりだっただろう。

という用語だった《オルタナティヴ》が、グランジ流行時代くらいから、〈ロック業界の内部のちょっと対抗的な分子〉くらいの意味に矮小化されて用いられ、ビックリしたさ。
ていうか正直、〈ムカつくんスけど〉とも思ったが。しかしそれさえすでに大むかしだし、いまはもうどうでもいいよね!

あっ。最小限の説明を、というつもりだったが、けっこう語ってしまいまんたった。
ともあれそのジス・ヒートも、現在はBandcampに出ている“こっち側”の一員なので、そのことを大いにPRしたかったんだ。

けれど小声で言うんだが、本来メインの作品である1stアルバムThis Heat、および2ndの“Deceit”──、それらの音質がもうちょっとかと……。ビニール盤で聞きこみすぎた音源のデジタル版はどうしても、というオレ個人の事情かもだけど。
逆にライブの“Live 80/81”、これが、かなりローファイだがアナログ由来の音圧感が保たれたサウンドで、すごくいい。推し!

そして圧倒的な創造性にあふれたジス・ヒート──何しろ彼らの音楽は〈クリシェ〉ってものをぜんぜん含有していない──が、どうこうののち。いま自分が、ややムキになってまで〈創造〉を否定しているかのようなヴェイパーウェイヴへと、ヘンにアツくなっている。
それぞれは、ともにこの文明への懐疑を共有しながら、そして《ポップ》をはさんで対極的な攻略法を構えている。

ECCO UNLIMITED: LIQUID NITROGEN (2012) - オレたちは《神話》を造る

ECCO UNLIMITED》は、ヴェイパーウェイヴ草創期からの重要クリエイターである《Internet Club》、本名ロビン・バーネット氏の別名義()。
このエコ・アンリミテッドというバンド名では、2コのアルバムが発表されている。そして“LIQUID NITROGEN”は、その2作のうちのひとつ。

そしてこれは、同じ作者の『▣世界から解放され▣』に並ぶ()、ヴェイパーノイズの代表的傑作なのではと、自分は思う()。

という風に説明くさいことを述べてみたけど、ようは自分が好きなんだよね。このアルバム『液体窒素』を。
そんなワケで、これをまたフとiPodに詰めて路上で聞いてたところ、〈ぅゎぁ、やっぱヤバくね? ブチ上がるし!〉という感想になったんで、これを記事にしたい。

と思ったら、前にも何か書いていたので()、それをチョコっと直して再掲──。

まあ、とにかくすごいノイズ。遠い感じはするけれど単純にリバーブをかけてるとかじゃない、またアナログ風でもない、何かふしぎな劣化プロセスを経た、ゴベェー、グワァー、ブィーン、のようなノイズの大渦。
そしてそれらにあわせ、ドローンみたいな響きが重なり、混じり合い、しかもその全体がときどきデジタル的にブツ切れる。

このアルバムは約15分の曲が2コ入りだが、たぶんC30テープの裏表に収まることが意識された構成。
そのA面では8分音符が3つ単位で反復されるベース音が、B面ではチップチューン風の「テレレレレ…」という装飾的な音列が、それぞれ耳に残る。また、A面はリズミカルで躍動的、B面は何か瞑想的、というふんいきの対照が意識されている感じもある。

で、この“LIQUID NITROGEN”は、きわめてきびしいノイズのかたまりでありながら、しかしなぜか全体の響きがひじょうに音楽的であり、しかも《ポップ》なのだった。
何か根本のところにふしぎな明るさとキレた感覚があり、インダスのノイズとはまったく違う。ヴェイパーでなければ、この音楽はできない。

また、〈ノイズだがふしぎにポップ〉というタスクの達成度ではスロッビング・グリッスルの偉業らにさえおよぶものがありそう。しかし、こっちのエコ・アンリミテッドはいっそうドライな態度で放り出されたしろもので、まさに21世紀の新しいサウンドになっている。

INTERNET CLUB: EXPLORE 2 (2020) - Bandcamp
INTERNET CLUB: EXPLORE 2 (2020) - Bandcamp
↑インタネさんの最新作、M7がヘンでいい!

──再掲、終わり。うん、2年も前の自分が、けっこういいことを述べていた。

それにしても、この『液体窒素』は……っ?

以前のレビューにも書いたんだが、このアルバムには、ロボットが戦争するビデオゲームのサントラ(の、なれの果て)みたいなふんいきがある。
そしてその戦争とは、『マハーバーラタ』や『エッダ』あたりが伝えているような、この現にある世界の秩序のもとになった神話的闘争なのだろうか──、という気がフと、してこなくもないのさ。

そしてその《世界の秩序》とは、オレらが何げにネットを見たり、ヴェイパーとかを聞いたり、そしてSNSとかに何かをカキコしたりしてるような──。そんな日常秩序の始源に、そんな激烈な神話的闘争が、あったような気がせんでもない。

今日、子供たちの環境にあふれている情報の量は驚異的なものである。(……)今日、一人一人の子供がデータ処理を迫られているその量は、いかなる人間の標準からいっても大きすぎるのである。
ではどうするか。子供たちは近道を見つける。子供たちは現実というものを構造的につかむことにおいて神話的〔ミシック〕となる。データを分類する代わりに、神話をつくるのである

マーシャル・マクルーハン他『マクルーハン理論』(p.140, 2003, 平凡社

これはオレらのマクルーさんが、ジャック・エラール著『プロパガンダ』という書の内容として、ご紹介されていた一節。原著の刊行は1960年。
しかしいま調べたところ、名ざされた著者エラール氏にしろその著書にしろ、ぜんっぜん消息や詳細らが不明なんだ。

古代ギリシア等の喪われた著作物で、〈他の著作への引用により、断片のみ伝わる〉というものが、かなり多くあるようだが。それが意外と古代だけじゃなく、20世紀にもっ!?
そうしてこのエラール『プロパガンダ』自体がいまは、神話的テクストと想定される以外にない。

もしも《神話》がなかったら、膨大なデータらが乱れ飛んでは埋もれ朽ちていく場であるこの世界に、《意味》を見出すことができない。だからオレらは日々のタスクとして、あれこれの《神話》を再構成しつづけている。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
ECCO UNLIMITED is another name for Robin Burnett, the real name of Internet Club, an important creator from the early days of Vaporwave. Two albums have been released under the name Eco Unlimited.
And “LIQUID NITROGEN” is one of the two works. I think it is a representative masterpiece of Vapornoise, alongside the same artist's 『▣世界から解放され▣』 (Freed from the World).

… Well, anyway, great noise! It feels distant, but it's not just a reverb, it's not analog, it's a big whirlpool of noise like goggoggoggo, gwaaarrr, zzboom, which has undergone some strange deterioration process. And along with them, the sounds like drones overlap and mix, and the whole is sometimes digitally cut off.

This album contains two songs of about 15 minutes, and it is supposed to fit on the both sides of the C-30 tape. On the A-side, a bass note with three notes repeated, and on the B-side, a chiptune-like decorative sound sequence remains in the ear. There is also a feeling that the contrast is rhythmic and dynamic on the A-side, and something meditative on the B-side.

So, this “LIQUID NITROGEN” is a very harsh noise mass, but for some reason the whole sound is very musical, and it sounds “POP”.

There is a mysterious brightness and a sharp feeling at the root, which is completely different from industrial noise. Only Vaporwave can make this music.
Also, the achievement of the task “Noise but strangely POP” seems to reach even the feats of Throbbing Gristle. However, this Eco Unlimited has been thrown out with a drier attitude, and it is exactly the new sound of the 21st century. There is no doubt about its greatness.