ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

Vaporwave のオンライン・フェスティバル 2020〜21 - 事実上の愛 が運ばれます

オンラインによる──つまりWebブラウザから参加できるような──、ヴェイパーウェイヴのイベントやフェスティバル。
この場でもそれらを、昨2020年7月の《LIVEWIRE Music Festival 2》以来()、ちらほらとご案内しています。

そこで、さいしょにすばやくお知らせをしてしまうと。〈来月〉となる2021年7月にも、3つのオンライン・イベントが予定されています()。
それぞれの規模はやや小さいようですが、しかし愉しい催しになることを期待しています!

で、さて。こういう催しが、愉しくていいことであるのはまちがいないとしても。

しかし、意外と。ヴェイパーウェイヴのシーンでは、大むかしからこうしたネット上のバーチャルなイベントが開催されてきた、というわけでもないようです。

そのあたりの事情を、ユートピア・ディストリクトの記事「世界的パンデミックはネットベースの音楽コミュニティに何を教えたか」(6月12日付)が、説明してくれています()。少し補足しながら、その紹介を試みます。

大もとのもとは……といえば、2019年に開催されたヴェイパー系の音楽フェスティバル、《100% ElectroniCON》の大成功、ということがあったようです。
これはかのジョージ・クラントンさんらが中心となり、さいしょ8月にニューヨークで、次は10月に《同・2》としてロサンゼルスで、それぞれ開催されたもよう。多くの人を集めた、実体のある──いわば通常の──フェスとして。

ヴェイパー系だけを集めた大きな音楽フェスティバルというものは、これが初めてだったようなのです。おそらく。

そして、この2回にわたった《100% エレクトロニコン》の大成功を受け、2020年はさらに盛り上がっていこう!……といういきおいのあったところに、しかしCOVID-19のパンデミックが発生。
これにより、《100% エレクトロニコン 3》の開催は、できないことになりました。もちろんヴェイパー系に限った災難ではなく、きわめて多くの人々が、いまなお不自由な状態にあり続けているわけですが。

で、それならば──ということでヴェイパーのシーンから立ち上げられたのが、オンラインのイベントやフェスティバルだったようなのです。
一連のそれらの第1弾かのように見られているのは、スカイラー・スペンス(SAINT PEPSI)さんらの主催による、《SYNCUP.WORLD》。その開催は、2020年3月28日です。

そしてそれ以後、現在までに開催された、やや規模が大きいと見られるヴェイパー系のオンライン・フェスらを、ざっと列挙します()。

[2020年]
5月 Business Casual 'Seventh Anniversary LIVE'
5月 Vaporspace Online
5月 PURE LIVE FESTIVAL
5月 LIVEWIRE Music Festival
7月 We Love DMT <3
7月 LIVEWIRE Music Festival 2
8月 SLUSHWAVE 2020
12月 LATE NIGHT LIGHTS
[2021年]
1月 Latin All-Stars Festival
2月 Vapor95 Live 5.0
5月 Business Casual 'Eighth Anniversary LIVE'
6月 SLUSHWAVE 2021
6月 WORLDWIDE.WAV

見落としているものもありそうですが、委細を略すれば、おおむねこのくらいです。
というわけで、ほぼ毎月のように挙行されています。規模の小さいイベントらをも数えれば、ほとんど毎週に近いものがあります。

Chie Otomi : LIVEWIRE FESTIVAL 2 (2020) - YouTube
Chie Otomi : LIVEWIRE FESTIVAL 2 (2020) - YouTube
ニッポンのオトミチエさんによる、アンビ
エント風エレクトロニカのライブセット

ということは──たぶんですけど──、だいたいは〈成功〉を収めているので、この流れが続いているのでは?

そうした〈成功〉の要因として、ゆ〜とぴあの執筆者たちは、いくつかを挙げています。

まず、ヴェイパーウェイヴという音楽とネットスペースとの親和性。
次にヴェイパーが、基本的に非営利、かつ《DIY》の音楽であるということ。ゆえに無償のイベントらでも、大きな熱意をもって運営されることができています。

皮肉なことに、制限の多いパンデミックの中で、ヴェイパーウェイヴを消費したり楽しんだりすることの障害は、間違いなく今までで最も小さいものです。

かつまた、イベントがオンラインで開催されることの副次的な利点として、彼らは次を述べています。通常のライブと異なり、動画プラットフォーム上でのビデオショーのログの公開が容易である。かつそれらが、音楽だけでないビデオアーティストらの〈ポートフォリオ〉としても利用可能、と。

そしてゆ〜とぴあの記事の最終節は、シーンの今後への展望です。
まずは、彼ら自身が開催しようとしていたイベント《WORLDWIDE.WAV》を宣伝し、そして次のような問いが提示されています。

いずれパンデミックが収まれば、イベントたちはリアルの時空に戻るべきなのでしょうか? それとも、これまでに積み上げてきたオンライン・イベントのノウハウを、さらに進化&洗練させていくべきなのでしょうか?

なお。さっき知りましたが、来る2021年10月末、米テキサス州オースティンで、《LEVITATION》と題された5日間の音楽フェス(バーチャルでない)が挙行されるようです()。
これはヴェイパー系のフェスではないみたいですが、しかしG・クラントンさんの出演がアナウンスされています。

できることならイベント開催は、リアル時空にて──。それは、多くの人の思うことでしょう。
そして、アメリカあたりでは──抗コロナのワクチンが効いてきているせいなのか──、すでにリアルへの帰還へのレールが敷かれ始めているようです。

ヴェイパー系についてもこの冬あたり、リアル時空でのフェス開催が、ないとも限りません。あるいは《100% エレクトロニコン 3》の開催が、来年くらいにはあるかも知れません。
もしもそれらがなされるなら、どうかトラブルなく成功してくれることを願います!

──と、いうところでお話は、一段落です。

あとここから少し、私がこのバーチャルのライブらを、ざっと眺めてきて思ったところを雑然と──しかしなるべく短めに──、述べます。

100% Electronicon 2019 (Telepath) - YouTube
100% Electronicon 2019 (Telepath) - YouTube
テレパシー能力者さんによる、壮大なる
パフォーマンス! へんなお面をかぶって
いるのが、またゆかいです!

その一。まず、オンラインの音楽イベントには、リアル時空でのそれとは異なる価値がある……と、考えられます。

いまはもう伝説の《100% エレクトロニコン》、その開催に参加した方々──、彼らの感動的な追想を、よく目にします。すばらしい、かつ羨ましい!
しかし、そうそう気軽にNYやLAへまで、行ける人が多いとも思われません。
いっぽうオンラインのイベントは、〈体験〉としてはやや薄いものになるでしょうが、しかしほとんどすべての人々にオープンです。ありがたすぎます。

その二。オンラインでも〈イベント〉となれば、ふだん聞く音楽とは、聞こえ方が違ってくるな……ということを感じます。

伝聞の情報ですけれど、一般のポップ音楽の世界でも、いろいろ違いがあるようです。厳選された《アルバム》らをご家庭などで聞いて、いいとかいまいちとか言っているファン層に対し、とりあえず《フェス》であれば出かけてみよう、みたいなファン層とでは。
そして、ヴェイパーウェイヴ系のオンライン・イベントにおいてさえも……。ビジュアルの隣のチャット欄のざわめきを背景とすれば、ほどよく活気のあるダンス志向みたいなトラックらが、より歓迎される傾向が、少し感じられました。

何かそうやって、チャットにしたって〈イェイッ〉だとか〈88888〉だとか、リアクションしてみせることを愉しむ。それも、いいことではあるのですが。
ですがしかし、〈たったの独りで、“音楽”へと対峙する〉という自分の構えを見失ってしまいそうな気もして、ささやかに怖さを感じなかったとは言えません。

その三。どうもヴェイパーウェイヴの人たちは、かんじんなことはするけど、広報とかを少々おろそかにしてないか、と思われる件。

こういうオンラインのイベントらに少し参加してきた中で、もっとも印象がよかったのは、昨年12月の《LATE NIGHT LIGHTS》です。まず音楽面のキュレーションがすばらしかったし、ピープルも超ナイスだったし、悪い想い出がぜんぜんないな、と。
ところがさっき、それについて自分が書いた記事を見直したら()、〈やや広報の不足ということが感じられる〉などとあり!

追ってそれ以後、さらに広報面で難のあるイベントらを見てきている、ということなのです。たとえばツイッターでちょっと告知されたりするのですが、しかし概要がよく分からない……。
あまりにも要領を得ないので、私がリプライで〈あの、すみません、そもそも何時に開演でしょう?〉と、質問したことさえありました。で、得られた情報を、私がアナウンスし直したりしましたが。

ただし──。何しろ私たちはアンダーグラウンドですから、あえて広報などをおろそかにすることも、アチチュードとしてはありえます。けれど、そういう構えがありそうな感じでもないんですよね!

そして、その四。これらオンラインのイベントらの〈成功〉は、ほんとうに成功していると言えるのでしょうか?
いや、〈自分がよければ、それでいい〉という私の観点からは、まぎれもなく大成功の連続なのですけれど……。

しかし、私が見てきた限り。ご紹介してきたようなフェスらは、もっとも大規模なものでも、リアルタイムの視聴者数が、500人を超えたことはありません。いやむしろ、300人におよんだことがまれ、と記憶しています。
いくらヴェイパーがマイナーでアンダーグラウンドであるにしろ、全世界に無料中継されている大規模なフェスであれば、もう少し人数があってもいい感じでしょうか?

とはいえ、参加者が感じるふんいきのよさでは、このくらいがベストなのかも知れません。仮に千人以上が視聴していたとすれば、チャット欄などもカオスになりすぎ、一体感よりも〈群衆の中の孤独〉を感じそうな気はします。

さらに、その五。こうしたイベントらの中には、わりと、こう……アーティストらへのインタビューみたいな時間が、じっくり長く取られているものがあります。
ちょっとならいいんですが、それが10分間も続いたら、私はいやになっちゃうんですよね! まあ、お祭の中にはこういった要素らが、あっても仕方ないのかとは思いつつ。

さいごに、その六。ゆ〜とぴあさんも述べている通り、ヴェイパーウェイヴは基本的に非営利で無料。それは実にありがたく、すばらしいことではあるのですが。
けれどもそのやり方で、今後シーンは長続きしていくことができるのでしょうか。それが可能であれば、とてもよいとは思うのですが。

──いま現在、ヴェイパーウェイヴについて書かれたこの記事をご覧の皆さんは、《luxury elite》をご存じだと思います。ヴェイパー立ち上がりの時期から活躍されている、きわめて偉大なアーティストです()。
このラグジャリー・エリートさん、ご紹介してきたようなフェスらのチャット欄で、しばしばその存在が目撃されるのです。ご本人が何かしらで出演サイドにもよくいる、そのせいもあるのでしょう。

で、さいきんひとりの参加者が、こんなことを言っているのを見ました。
〈ラグジャリーさん、あなたをリスペクトしている、ぜひ何か支援したい、あなたの音楽を買わせてもらいたい〉
するとラグジャリーさんは、こう答えていました。

〈いやいや買う必要なんてないでしょ(笑い)、ぜひ無料でゲットしてください!〉

こういう感じでヴェイパーウェイヴは、いままでやってきたようです。いや、こんな調子で、よくやれてきたなあ……とも思えます。
ですけれど。〈カネになってもならなくても、やりたいことはやる〉というのがヴェイパーの姿勢だとしても、しかしカネなんかぜんぜん要らないってことでもないだろう、と思うんですよね。

いっぽう。ヴェイパーの営業的な成果が上がりすぎても──あまりそういう見込みは感じていませんが──、またそれが問題のもとになりうるかも。
なぜなら。この音楽の著作権がらみの〈問題〉が、意外ときびしく言われていないのは、要するにマイナーでカネが集まっていないから、とも考えられるからです。

ああ、いや。だいたい私は《情勢論》みたいなものを苦手なので──たまに言っても読みの正しかったことがなさすぎる!──へんに踏み込まないほうが、ぶなんのようです。
ともあれ。また8月か9月あたりには、大きめのオンライン・フェスの開催がありそうな気もするので。それらイベントの成功はもちろん、音楽としてのヴェイパーのまたの成長とブレイクスルーに、大きな期待をし続けているのです。