ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

Khruangbin: History of Flight EP (2015) - ボクらの愛はジャヴァ・ジャヴァと、こぼれて落ちて流れ

《Khruangbin》という彼らのチン妙なバンド名は「クランビン」くらいに読み、タイ語で飛行機のことだという。米テキサス州出身のギターインストトリオだが、どういうワケなのか「タイのファンクから強い音楽的影響を受けた」、と言い張っているらしい()。
そしてご紹介するHistory of Flight”は、彼らクランビンの最初期のリリースである4曲入りEP。内容はすべてカバー曲で、そのオリジナルの作者らを列挙すると、エンニオ・モリコーネ、タイの人、セルジュ・ゲンズブール、そしてかのマーチン・デニー

いやそれにしても、「こんなことをずっと知らなかったとは!」と、独りかってに赤面させられることがいまだ多くって。そして、このクランビンさんを知ったのがつい最近、という事実もまた赤面モノだと自覚。
実のところ全世界にてポピュラーなんだよね、この奇妙きてれつなグループが、少なくともマイナー音楽愛好の界わいでは。それどころか、すでに来日公演もしたことあるらしいし。

しかしまあ俗世間での知名度なんか《ここ》では関係ないので、現象としてクランビンは、いったいどういう音楽なのだろうか。

まずその表面的なスタイルは、ベンチャーズ等に代表される1960's風ギターインストにもっとも近い、と言えそう。しかしその中にニュアンス的に、ファンク、カントリー、エキゾチック、そしてダブらが現れる。
かつ本人らが言い張るタイのポピュラー音楽、その要素らもたぶん入っているのだろう。ペンタトニックスケール(ヨナ抜き音階)の演歌チックな扱い方なども散見されて。
そういう複雑なものなので、クランビンの音楽のジャンル分けは、全世界的な話題でありかつ難題だ、と言われているらしい、英語のウィキペ等によれば。

しかし自分としてはこれをかんたんに、《ラウンジ》である、と言って解決したいんだよね。別にラウンジという独自のスタイルが存在するワケではないが、そのムードとアチチュードに強いラウンジ味が存在する、ということから。

ちなみに。サーフィン/ホットロッド系のギターインストなんて、現在のニホンでは流行ってない(と思う)が、しかし海外では地味ィに根強い人気を誇り続けている。むしろ1990's以降、ガレージパンクやサイコビリーらと合流しつつ、逆に盛んになっている感じさえ。
またそのいっぽうに、それと似たような題材らを違うアプローチで洗練させていった、ジェームズ・テイラー・カルテット(JTQ)のようなバンドもある。わざとらしくアナクロなネタとスタイルを出してくる態度が、いちおうは《ラウンジー》だと言えそう。

しかしクランビンの音楽には、それらとはぜんぜん違うフレッシュさ、さわやかな軽やかさを、衝撃的に感じさせられたんだよね。自分が望んでいる《ラウンジ》のゴール枠、そこにベッカムばりのバナナシュート軌道で、超あさってから飛び込んできてくれたんだ。

そしてご紹介したい「ヒストリー・オブ・フライト」は、そのクランビンのラウンジ性が、もっとも端的に表わされた作品。何せもとの作曲者からして、ラウンジ系の神々みたいなお方たちだし! いやタイの人だけは、あまりよく知らないけれど。
そしてそのすべてのトラックがすばらしいが、中でも絶品だと人に告げたいのは、あのゲンズブール神曲「ラ・ジャヴァネーズ」)を、わずか103秒間ぽっちのインストにまとめてしまったしろもの。ナメてんのかペロンとテメーらは(絶賛)。このしっかりした軽妙さはほんとうに存在しない、他のラウンジめかしたバンドらには。

かつその「ラ・ジャヴァネーズ」の中でまたまた注目したいのは、ベース担当の女性ローラ・リーさんのやってなさること、その《意味》がまったく分からない。
いやスジが通ってない演奏ではないんだが、にしても発想がエキセントリックというか異次元的だ。実におかしい、何ものなのか?

そしてたまにはミーハー的なことも言わせてもらうと、自分はヘンに淡々と演奏する女性ベーシストのような方々、それがとても好きなんだ。そもそもベースそのものが大好きな、そのまた上に。
たとえば……。というと古い例ばかりが想い出てくるんだが、トーキングヘッズ等のティナさん、ギャング・オブ・フォー等のサラさん、アーリーキャッツのダイアンさん……。
そうしてわれらがクランビンのローラさんが新たに、このお気に入りの系列へ、めでたくスポッと入ってしまったワケ。イエイッ、これはクセになりそうだ。