エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

Smeared Lipstick: sophomore (2020) - 眠みの中に溶けていく快楽のエコー

《Smeared Lipstick》、ちょっとエロチックなニュアンスのある〈にじんだ口紅〉というバンド名のヴェイパーウェイヴ・クリエイター。その人は、カンサス州インデペンデンス出身あたりを主張()。
そして今2020年、2作のアルバムを、オレが信頼するレーベル《B O G U S // COLLECTIVE》からリリースしている。

ところで。ワールドワイドのヴェイパーウェイヴのファン層ってのも広大膨大すぎてアレだけど、自分がばくぜんとウォッチしてる限り、〈意外にテンションが高いようなサウンドが好まれるのかな〉、という一般的嗜好を感じるんだよね。

たとえば〈ヴェイパー系のライブキャストですよ!〉というお知らせを見て、ブラウザを開く。するとヤッてる音楽は、多少はヴェイパー臭があるにしても、ドラムンベースの激しいヤツだったり。
そこで、〈こういうのもいいけど、でも……〉と、ついつい自分なんか少し引く。だがしかし、映像の横チョのチャット欄は、好評で大いに盛り上がっている。イェイッ

前から思ってんだけど、どうせポップ音楽の世界では、テンションが高く、パワフル&エモーショナルである──、そういう作風のほうが一般的に好まれる。しかも、話題になりやすい。
逆に《アンビエント》やそれに近いような音楽たちは、よくても悪くても目立たず、話題になりにくい。テンサゲであり、パワーやエモーションらを切り棄てていくようなサウンドでは。

……と、それは一般の世間の傾向だが。しかしヴェイパーウェイヴの世界でさえ、少し似たようなところがあるのかな……ということを、近ごろ感じていなくない。

さて、お話は戻りまして、在カンサスの新鋭(らしき)ヴェイパー者、スミアード・リップスティックさんのこと。
この人による既発アルバム2作──“I”、および“sophomore”──、そのいずれもが、テンションの低さのあんまりなきわまりなんだよね。ジャンル的には、いちおうレイトナイト系と言えそう()。

2作とも傾向はほとんど変わらないので、ここでは後発の“sophomore”のほうを見ていこう。このアルバムは、全7曲・約24分を収録。そしてタイトルの〈スフォモア〉とはカレッジ等の2年生のことらしいが、たぶん〈2ndアルバム〉の言い換えだと推測。

それがどういう音楽かというと、まったくどうでもいいようなスムースジャズや一般ポップなどの素材らを、きょくたんにスローでひたすら眠たい響きに仕立て直しただけ、みたいなもの。
そして、そういう風にしていくプロセスを《ヴェイパー処理》と、自分なんかは呼んでいるワケだが()。

ただし。自分とかはヘンなサウンドを聞くと、〈どうやって作ってるの?〉ということをついつい考えがちだけど、しかしそんなことを考える“必要”はない。
けれども、いまここに現象として、ひたすらにスローで眠たい響きが、ある──。いや、“ある”って言えるほどの実在感を伴わず、それがおぼろげに、蒸気のように(!)、漂っている。

そしてその、ひたすらにスローでフラットに拡散された眠みマシマシの響きは、いったい《何》を伝えているのか。
〈作者の意図〉なんていう伝説的な存在は問題にしないので、かってに自分が受けとったものを記述しようとしてみると、それは拡散されきったヌルい《快楽》の残りカス。または、その遠すぎるメモリーらの残響。

あえて言うと《ヴェイパー処理》は、そのスローダウンによって〈ヌルさ〉を、そのEQ処理によって〈遠さ〉を、そしてリバーブ処理によって〈残響〉であることを、それぞれ実現している。
そうやって、素材となった楽曲ら、その本来のテンションの高さ、またその表現していた《享楽》への性急な希求……等々を、フラットに〈拡散〉しつくしてしまう。

そして、そういう所業とそういうサウンドを、なぜかとくべつに自分が好んでいる。

けれど、ヴェイパーウェイヴを受容している層の中でも、そんな嗜好は、さほど一般的でもないのかな──ということを感じてるワケなんだよね、近ごろ。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Vaporwave creator, named Smeared Lipstick, claims to be from Independence, Kansas. Now in 2020, he has released two albums from the reliable label B O G U S // COLLECTIVE.
His two albums, “I” and “sophomore”, all have the same tendency, with smooth jazz and general pop that don't matter, and just remade into a slow and sleepy sound. It seems.
Is it a completely diffused null pleasure or the reverberation of its too distant memories? Really pleasant.

Hackosef: ストリート から 平和 (2020) - 回帰せよヴェイパーウェイヴの正道へ

とあるひとりのヴェイパーウェイヴ・クリエイターが、《Hackosef》を名のっている()。彼については、関係しているレーベルからカンタンなバイオが公開されている()。

Hackosefは、2018年からヴェイパーウェイヴアルバムを制作しているマルセイユ出身のフランス人アーティストです。
彼の音楽は、夢のようなグリッチなクラシックスタイルのヴェイパーウェイヴと言えます。彼の最新アルバム「ダンスから平和」がCityman Productionsから入手可能になりました。

なぜかグーグル翻訳がアルバム名を誤訳しているが、でもこのくらいを知れば、彼の“すべて”が分かった、と言えそう。けれども分かっていないことらのひとつは、まず《Hackosef》という彼の名の読み方。
フランス語ならばH(アシュ)を発音しないワケだけど、しかしこのバンド名が仏語そのものであるのか、ナゾ。とりあえず、いまは《アコセフ》さんと呼んでおくね!

さて。そのように、アルバム『ストリート から 平和』がキチッとプロモーションされたせいなのか、その評判が自分の耳にも届いた。そして一聴、すごくいいと思ったんだ。

なんど聞き返しても、思う。このアルバムの冒頭曲「未回答の質問...」の、ユルぅ〜いドリーミィなムード音楽。次の2曲め「輸液」の、憂いあるチルホップ。そして3曲め「動機付ける」は、ノスタルジックな軽ジャズ……。
そこまでの流れがあまりにも完ペキなので、聞くたびにスゴいと感じ、引きこまれる。モールソフトやレイトナイトの系列の()、スゴい新人が出てきたぜェ、とうれしみを覚えてしまう。

ただし、こういう言い方で、カンのいい人は気づいたと思うけど。惜しくも、それから4曲め以降の〈流れ〉が、あまり完ペキではない風。

……この『ストリート から 平和』というアルバムは、全14曲・約55分を収録。その中に、オレの求める水準以下の楽曲は1コもなくて、それぞれにグッド。
しかし《アルバム》として聞くと、その序盤からあとの〈流れ〉がいまひとつ、という感じになっちゃうんだよね。

いや、まあ。いまさらロックの全盛期のコンセプトアルバムじゃないんだから、あまり強く、〈アルバムの流れるような統一感〉なんかを求めてもいないけれど。
だがそれにしても、きらくな姿勢で雑に聞いていて、それでも、いちいちの曲調の変化が凸凹してるな〜という印象を受けてしまう。
あるいは他の人の感じ方はそうじゃなく、〈むしろ起伏があっていい〉という意見もあるかもだけど!

ところでここからお話の、時系列がちょっと戻って……。

この、アコセフさん。彼の初期みたいな時期の作品らは、何と意外にも、ほとんどがフューチャーファンク()。ヴェイパーウェイヴでは、“ない”。すでに50コくらいものアルバムやEPらが出ているんだが、自分のざっと調べた限り。
正しくヴェイパーだと言える彼のアルバムらは、まず2019年10月の“morning broadcast”がお初()、その作風はシグナルウェイヴ()。続いたのが20年1月の今作『ストリート〜』、そして同5月の“rose quartz。以上の3作のみ、と考えられる。

だとすると、さきに引用したバイオの〈彼の音楽は、夢のようなグリッチなクラシックスタイルのヴェイパー〉という一文には、多少の誇大さがっ?
とはいえ『ストリート〜』というアルバム自体はおおむねそうなので、このレーベルがサギをしてるとも言えんのやけどなブヘヘヘヘ

しかも、このアコセフたん。いままで彼が大量に生産してきたフューチャーファンクらは、あまりそっちのファン層にウケてもいなかった感じ。ヴェイパーよりもずっと《売れセン》というか、人気の出そうなジャンルかと思われるのに。
そんな彼が、ヴェイパーの《正道》と呼ばれるストリートへとたち戻って、やや日の目を見た。それが、一定の成功を収めた作品『ストリート〜』なのだ、というストーリーが書けそう。じゃあオレたちも、アコセフつぁんの更生を応援しようぜ!

なお、さっき題名の出たアルバム“rose quartzは、全体の傾向が『ストリート〜』に近く、やはり楽曲らのレベルはかなり高い。しかし同じく、アルバム的な完成度はもうチョイ、と自分は思う。

たとえば。その8曲め“misty”は、実に眠みのつよつよな、約11分間の長いトラック。そこはいいんだけれど、だがその次の曲で、いきなりチンドン屋さんのサックスがクソデケェ音で鳴りくさる、いやいやマジで。
そういう〈流れ〉のブチ切りと凸凹感が、ちょっとオレのフに落ちないんだよね。
かと思えば、そのまた次の10曲め“cinema”は、ややIDMめいたテンポの速い曲。けれどもそっちの紋切り型ではなく、実にふんいきが濃い。この楽曲はいい。

と、このように行ったり来たりの作品だと、それをご紹介している文章も行ったり来たりになって、オレが皆さんに対して申しわけないんだぜっ。
だがともかくも、このアコセフっち、かなり非凡なセンスを持っていることは確か。あともう少し、アルバムの構成とかを練ってくれるよう願いつつ、見守っていきましょう!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Hackosef, a Vaporwave creator from Marseille, France. He has been producing a lot of future funk since 2018, but he seems to have been less successful in the field.
And he returned to the street that can be called right path of Vaporwave and released the album “ストリート から 平和 (Peace from the Street)”, in January 2020. The style is Mallsoft and Late Night Lo-fi. This is a remarkable work.
The flow of the first three songs of that album is really wonderful, perfect. I was deeply moved and fascinated.
However, the flow after that is not very good. The standard of all the songs is high, but there are many feelings that the assembly as an album is bumpy. There is a lack of unity in the atmosphere.
Monsieur Hackosef, who seems to have a fairly extraordinary talent. I hope that his future works will be improved the point of assembling as an album.

お役立ちPC講座 - foobar2000の機能で、あらゆる楽曲らをヴェイパーウェイヴ風に鳴らす!

さあ〜っ!! この記事では、ちょっとしたお遊びの手順をご説明いたしちゃうよ!
そのお遊びとは、〈フリーで多機能なPC用音声プレーヤーであるfoobar2000を用いて、ありとあらゆる音楽をヴェイパーウェイヴ風に再生する〉!!

《もくじ》 | 1. こんなチン妙な思いつきにいたった理由はといえば | 2. foobar2000の導入と基本的運用まで | 3. 今回のテストに使う音楽ファイルの入手 | 4. 必要なFB2k用コンポーネントらの入手 | 5. FB2k用コンポーネントらのインストール | 6. ヴェイパー処理用・FB2k用コンポーネントらの設定 | 7. 即席ヴェイパーウェイヴの鑑賞、および結語

1. こんなチン妙な思いつきにいたった理由はといえば
画像:動いているfoobar2000の一例
動いているfoobar2000の一例(見かけは可変)

いままでこの場にて皆さんとご一緒に、《ヴェイパーウェイヴ》を愉しく鑑賞し、かつ、それがどういうものかを考察してきたよね。
そして得られた知見のひとつが、次のようなこと。

何らかの既成の楽曲に対し、自分の言う《ヴェイパー処理》を施せば、それの聞こえは、おおむねヴェイパーウェイヴ風になってしまう。
そしてその《ヴェイパー処理》とは、だいたい次の3つのプロセスである。

  1. 原曲のテンポとピッチを同時に下げる。目やすは30〜70%。
  2. イコライザー(EQ)で、高音と低音をゴソッと削る。
  3. オマケとして、リバーブやフェイズシフター等でフレイヴァリング。

もちろん、たったこれだけのことがヴェイパーの本質だとは考えられない。だがしかし、たったこれだけの処理でヴェイパーっぽく聞こえてくる、という事実もまたある。

そして。こういう処理を再現してみるために、高性能なフリーの音声編集ソフト《Audacity》を使うのはいい方法だ()。たぶん処理の質が高い。
けれど、ほとんどの処理がリアルタイムではできず、手間も時間もかかっちゃうんだよね。こっちサイドの目的が、〈ちょっとヴェイパー処理をしてみたい〉くらいだとすれば、その〈ちょっと〉の感覚に合わない。

そこでっ! 目をつけたのが、《foobar2000》(以下、FB2k)。これの追加コンポーネントを活用すれば、いちいち手間をかけずリアタイで連続的に、いろいろな楽曲をヴェイパー処理してそのサウンドをエンジョイできるんだ!!

んでは、そこまでの手順を以下に。

2. foobar2000の導入と基本的運用まで

FB2kをインストールし、一般的なフォーマットの音声ファイルを鳴らせる状態へ。そこまでの手順は、他サイトの記述を参考にしてたもれ。
いや、別に手抜きじゃない感じ。ひじょうに有名かつ人気のあるソフトなんで、キホンを分かりよく解説しているサイトがいっぱいあるっス。その中でもニホン語で包括的説明があるのは、ここ()、ここ()、あたりか。

ちなみにFB2kは基本的にウィンドウズ用ソフトだが、いまはMac用もある()。Macのことは知らないので確かなことは言えないが、まあ動くんじゃなかろうか。
また、《Wine》という補助ソフトを用いれば、Linuxでも運用可能。現に、うちではUbuntuなんだ。
けど後者について、小さな問題。FB2kの現在の最新バージョンが〈1.6.1〉なんだが、これは現在のWineでは動かないかも。〈1.5.x〉なら大丈夫。まあ細かいことっスね。

かつまた、この記事のPC画面キャプチャ画像ら、その文字やら何やらの見え方が美しくないのも、現在のWineの能力がイマイチなせいでありげ。いずれ改善ありたし!

3. 今回のテストに使う音楽ファイルの入手

もういまどきは、PCなんかで音楽を鳴らすにもストリーミングのみ、という方々がいそう。それはそれでいいが、しかし今回の実験には、ローカルの音楽ファイルが必要のよう。mp3、flac、wav、といった一般的フォーマットらで。
かつこの実験の素材にする音楽として、メロディックで形式重視でテンポがやや速いほうが、効果が分かりやすそうかも?

と考えたら、ユーロビートなんかいいかなと、つい思った。

ということでテキトーに探したので、お手元に何もなければ、マイリトルポニーのヤツをダウンロードしてね! これは購入価格を“$0”とすれば、無料にて入手可能。で、Zipアーカイブをササッと解凍しておじゃれ。

4. 必要なFB2k用コンポーネントらの入手

さて今回の実験ではFB2kに、次の2コのコンポーネントらを新たにインストールする。

  • SoundTouch DSP(ファイルの実体は、foo_dsp_soundtouch.dll)
  • Freeverb DSP(ファイルの実体は、foo_dsp_freeverb.dll)

本来の《DSP》とはリアルタイムで信号処理をする素子のことだが、その挙動をシミュレートするコンポーネントらなんだ。それぞれのあり場所は、ここ()、ここ()。

と、そこまではいいはずだが。しかし困る(かも知れない)のは、DLされるファイルらが、7zおよびRarという、ややレアな圧縮形式で固められていること。
これらの解凍が分からぬ、できぬ、という場合には、7-Zipアーカイバの導入がオススメ()。フリーでしかもオープンソースのソフトなので、完ペキと考えられる。

まあ。ホント言うと、〈固めるにしたって、一般的なPK-Zipで十分じゃろがい!〉とは思うんやけどなブヘヘヘヘ。

5. FB2k用コンポーネントらのインストール
画像:ブツが追加できたComponents欄
成功裡にブツらが追加できた《Components》欄

何やかやして、前記の2コの《.dll》ファイルらを入手できたとする。そうしたら、FB2kのインストールされたフォルダのサブフォルダ、《components》の中にそれらを置く。

だがその、FB2kのインスコされた場所が分からない、っていう人います? 自己判断でヘンなことをしてない限り、Winであれば、〈c:\Program Files\foobar2000\components〉のような構成になってると思うんだけど……。
これがUbuntuであれば、場所はたとえば、〈/home/マシン名/.wine/drive_c/Program Files (x86)/foobar2000/components/〉、みたいになる。が、Macのことは知らないのでスマン。

ここまでができたものとして、そこでFB2kを、(再)起動。そして〈Ctrl + P〉、あるいはプルダウンメニューから〈File → Preference〉。そうして設定画面を開いたら、左側のツリーのいちばん上、《Components》のところをクリック。

そして右側の欄の中を見ると、いま追加した《SoundTouch DSP》および《Freeverb DSP》、それらの名前が見えているのでは? いるはずだがっ!?

6. ヴェイパー処理用・FB2k用コンポーネントらの設定
画像:ブツらの追加された《DSP Manager》欄
ブツらの追加された《DSP Manager》欄

そこまではできたものとすれば、次には左側のツリーから、〈Playback → DSP Manager〉を開く。すると右側の欄が、《Active DSPs》、《Available DSPs》、という2コのワクに分かれているだろう。

そして何もしていない場合、《Active DSPs》のワクの中は空白であるはず。
いっぽう《Available DSPs》のワクの中には、何かがいっぱいある。その中の今回必要なものたちを、順番にダブルクリック、もしくは〈+〉の記号を1クリックして、《Active DSPs》のワクの中に追加する。

追加する順番は、《SoundTouch DSP》、《Equalizer》、《Freeverb DSP》。これは標準的なヴェイパー処理の、〈スローダウン → EQ → オマケにリバーブ〉、という順番に沿う。なお、EQはさいしょからインスコされているはず。
ただ、この順番決め等々は、あとからいくらでも変えられるので、いずれ自分がいいと思うようにしちゃえ。どうであれ、もとの音声ファイル自体は変更も加工もされないので、おきらくに進めよう。

そして、ワリにヴェイパーウェイヴっぽい音になるような、各コンポーネントの設定だぜ。設定するには、《Active DSPs》の各項目の右側の〈…〉をクリックする。

画像:《SoundTouch DSP》のヴェイパー的セッティング
《SoundTouch DSP》のヴェイパー的セッティング

まずさいしょ、スピード変更用の《SoundTouch DSP》。ピッチとテンポを独立に変更可能であるのがカシコいところなんだが、しかしヴェイパー的には、〈Rate adjust〉のところしか触らない。
この〈Rate adjust〉設定は、ピッチとテンポを同時に変更する。とりま、マイナス50%くらいの値が適切。
その下の〈Anti-alias Filter〉は、チェキすればデジタル的な歪みが減ってくれるはず。でも実は、あまり効果が分からない。続くEQ処理で、上下の周波数を削っているせいだろうか。
まあ、ここは気休めでオンにしとけば? たぶん、前記の〈独立に変更〉をなした場合によく効くのかな、と愚考。

次に《Equalizer》のグラフィックEQは、言うところの〈カマボコ型〉にセッティング()。シリアスな曲作りの場合には、もっと攻めたセッティングがイカす場合もありそうだが、でもいまはテスト(お遊び)なので、ややユルめの〈への字型〉に。

さいご《Freeverb DSP》のリバーブ設定はひとまず、すべて中央値にセットするのが無難()。ヘンなセッティングだとカンタンにインダスノイズ系になるので、ちょいと遊んでみてもいいっスよ!

7. 即席ヴェイパーウェイヴの鑑賞、および結語

と、作業らは以上で終了! そしていよいよ、さきに用意したポニーちゃんのユーロビートを再生すると──いや実は、再生しながらでも、セッティングを変更できるんだが──。
……ぬぅむ。もと曲のテンポが160BPMとかいうクソ速さだったりするので──たとえば一般的なハウスなら124BPMあたりなのに──、その半速にしたくらいでは、ヴェイパーそのものみたいな脱力感にはいたっていないかも?

むしろ、インダスっぽくなっているフシもなくはない。だがそれでも、2・3・5・7曲めあたりは、ちょっと感じが出てると考えられる。
なお、こうしてDSPらで処理されたサウンドを、ファイルに出力することもできる。その設定がまた複雑だが、しかしキホンはFB2k解説サイトらにも書かれている〈コンバート機能〉の応用。

他にいろいろと自分が再生してみて、意外にイイと思ったのは、ジャズやクラシックである素材ら。とくに、ハードバップ以前のノスタルジックなジャズあたりで、すごく鳴りがイイのがある。
また、オペラのよくある〈名アリア集〉とかもいい。「歌に生き愛に生き」、「復讐の炎は地獄のように燃え」、「イゾルデの愛の死」、みたいなアレらが。

たとえると、ジャズ/クラシック系音楽のこれでの再生により、《Caretaker》というダークアンビエントのヘンなアーティストがいるんだが()──そして万国の無法アングラ界では、そのヘンな人の評価がすごく高いんだが──。ややそのサウンドにも近い、心細い感じが得られるんだ。
その鳴り方はまるで、20世紀初頭の映画のサントラの想い出たちのような……。または、ゼンマイじかけの蓄音機やオルゴールらの、機構の動作がいまにも止まりそうという状態が、ずう〜っと続いているような……。

そして。
奇妙でチン妙なヴェイパーウェイヴのサウンドが、むしろ《自然》だと聞こえるようになってしまった、おかしい耳。それで聞いていると、ここまでに構築してきたシステムによるチン妙な鳴りが、やはり《自然》かのようにも聞こえてしまう。

で、それこれまでに追求されているヴェイパー処理とは、いったい《何》をなしているものなのだろうか? それは《音楽》を、変質的に愛おしみすぎているのか、あるいは単にじゅうりんしちゃっているのか?

└∀スタイル: James Brown Is Phased (2020) - ジェームズ某は荼毘に付したよ

James Brown Is Phased!

ジェームス・ブラウンは、位相になっています!

レイヴ!

ニュービート!

オールドスクール

ガバーハウス!(とはちょっと違うが)

ハードコア・テクノ〜っ!!

Dj Not Not: Dreamwave Plus (2020) - あなたの悪い噂を耳にしました。

《Dj Not Not》は、オクラホマ州タルサに在住か何か、というヴェイパーウェイヴ・クリエイター()。だとすると、J.J.ケイルとかリオン・ラッセルとかのアレですかね!?
いやそんなむかしのサザン(風)ロックとかは、別に関係なさそうだけど。

ともあれDJノット2さんは今2020年、ちょっと信頼性のあるレーベル《B O G U S // COLLECTIVE》からデビュー()。そして2作のアルバムを発表しており、1作めはスプリット作、続いたDreamwave Plus”が最新のもの。

彼のはどういうヴェイパーかというと、だいたいはクラシックスタイル+ちょっぴりレイトナイトのフレイヴァ、のような感じ()。
あわせて、たまにコスリ(スクラッチ)やMC-ingが入ったりするのは、芸名の一部の〈DJ〉であるところのアピールだろうか。かつ、リリース元のボーガス・レーベル自体にヒップホップ・テイストの侵蝕を自分は感じているので、これもその表れなのかな、とも。

そこいらまでは、まあ“ふつう”といえばそうなんだが。しかしこのDJノット2さんのサウンドの奇妙なやさしみに、自分はひかれるところがあるのだ。

というのも近ごろのヴェイパーって、聞きづらいのがけっこう多いなと、自分は感じてるんだよね。スタイルとしてはクラシカルなんだけど、しかし必要以上に音を荒らしてるのが、ワリと目だって。これは、同じボーガスから出ている作品らにもけっこう言える。

そういう中で、DJノット2さんのサウンドは、あるいは《無ぞうさ》にギリギリ近いところまでの、聞きやすさを供給しているかなと思う。

そのいちばん分かりやすい(かも知れない)例はアルバムの6曲め、“B A N A N A S”。これが実にあの、バ十十うマ「マイ・八ード・マ・ルーアー」(1987)を、丸ごとそっくりアレした楽曲なんだけど……。
それが実にその、〈ちょっと遅くしただけじゃろがい!〉、とも言いたくなるようなアレ。

追試からの知見によれば、もと曲のスピードを約70%まで落とすと、だいたいこの響きになる。多少だけEQの併用もありそう。で、ほんとうにようしゃなき原曲の丸使い。
だが、たんじゅんにそれで気持ちのいい音になっている。かつ、もと曲が《神》すぎることもあるので、これも大アリだと考えざるをえない。

と、いや、そんな無ぞうさなことばかりをしてるってワケでもなさそうだけど。ともかくそのように、ヘンに作りすぎずに気持ちいい音を出力しようみたいな姿勢、そこについ共感しちゃったんだよね!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Dj Not Not is a Vaporwave creator who seems to be from Tulsa, Oklahoma. Debuted in 2020 from the trusted label BOGUS // COLLECTIVE. He has released two albums, and “Dreamwave Plus” is the latest. The first work before that is a split work.
His work is like a classic style + a little Late-Night flava. At the same time, the occasional scratches and MC-ing are the appeal of being a part of the stage name “DJ”. Also, I feel the erosion of hip-hop taste in the release source BOGUS label itself, so I think this is also a manifestation of that.
By the way, what I sympathize with Dj Not Not is his attitude of pursuing a pleasant sound without fear of feeling almost casual.
For example, the sixth song on the album, “B A N A N A S”, is a song that is just a little slower version (think about 70% of the original song) of that 8nαnαrαmα “1 Hεαrd 4 яum0ur”. But it sounds good enough. This is fine.