エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

Hackosef: ストリート から 平和 (2020) - 回帰せよヴェイパーウェイヴの正道へ

とあるひとりのヴェイパーウェイヴ・クリエイターが、《Hackosef》を名のっている()。彼については、関係しているレーベルからカンタンなバイオが公開されている()。

Hackosefは、2018年からヴェイパーウェイヴアルバムを制作しているマルセイユ出身のフランス人アーティストです。
彼の音楽は、夢のようなグリッチなクラシックスタイルのヴェイパーウェイヴと言えます。彼の最新アルバム「ダンスから平和」がCityman Productionsから入手可能になりました。

なぜかグーグル翻訳がアルバム名を誤訳しているが、でもこのくらいを知れば、彼の“すべて”が分かった、と言えそう。けれども分かっていないことらのひとつは、まず《Hackosef》という彼の名の読み方。
フランス語ならばH(アシュ)を発音しないワケだけど、しかしこのバンド名が仏語そのものであるのか、ナゾ。とりあえず、いまは《アコセフ》さんと呼んでおくね!

さて。そのように、アルバム『ストリート から 平和』がキチッとプロモーションされたせいなのか、その評判が自分の耳にも届いた。そして一聴、すごくいいと思ったんだ。

なんど聞き返しても、思う。このアルバムの冒頭曲「未回答の質問...」の、ユルぅ〜いドリーミィなムード音楽。次の2曲め「輸液」の、憂いあるチルホップ。そして3曲め「動機付ける」は、ノスタルジックな軽ジャズ……。
そこまでの流れがあまりにも完ペキなので、聞くたびにスゴいと感じ、引きこまれる。モールソフトやレイトナイトの系列の()、スゴい新人が出てきたぜェ、とうれしみを覚えてしまう。

ただし、こういう言い方で、カンのいい人は気づいたと思うけど。惜しくも、それから4曲め以降の〈流れ〉が、あまり完ペキではない風。

……この『ストリート から 平和』というアルバムは、全14曲・約55分を収録。その中に、オレの求める水準以下の楽曲は1コもなくて、それぞれにグッド。
しかし《アルバム》として聞くと、その序盤からあとの〈流れ〉がいまひとつ、という感じになっちゃうんだよね。

いや、まあ。いまさらロックの全盛期のコンセプトアルバムじゃないんだから、あまり強く、〈アルバムの流れるような統一感〉なんかを求めてもいないけれど。
だがそれにしても、きらくな姿勢で雑に聞いていて、それでも、いちいちの曲調の変化が凸凹してるな〜という印象を受けてしまう。
あるいは他の人の感じ方はそうじゃなく、〈むしろ起伏があっていい〉という意見もあるかもだけど!

ところでここからお話の、時系列がちょっと戻って……。

この、アコセフさん。彼の初期みたいな時期の作品らは、何と意外にも、ほとんどがフューチャーファンク()。ヴェイパーウェイヴでは、“ない”。すでに50コくらいものアルバムやEPらが出ているんだが、自分のざっと調べた限り。
正しくヴェイパーだと言える彼のアルバムらは、まず2019年10月の“morning broadcast”がお初()、その作風はシグナルウェイヴ()。続いたのが20年1月の今作『ストリート〜』、そして同5月の“rose quartz。以上の3作のみ、と考えられる。

だとすると、さきに引用したバイオの〈彼の音楽は、夢のようなグリッチなクラシックスタイルのヴェイパー〉という一文には、多少の誇大さがっ?
とはいえ『ストリート〜』というアルバム自体はおおむねそうなので、このレーベルがサギをしてるとも言えんのやけどなブヘヘヘヘ

しかも、このアコセフたん。いままで彼が大量に生産してきたフューチャーファンクらは、あまりそっちのファン層にウケてもいなかった感じ。ヴェイパーよりもずっと《売れセン》というか、人気の出そうなジャンルかと思われるのに。
そんな彼が、ヴェイパーの《正道》と呼ばれるストリートへとたち戻って、やや日の目を見た。それが、一定の成功を収めた作品『ストリート〜』なのだ、というストーリーが書けそう。じゃあオレたちも、アコセフつぁんの更生を応援しようぜ!

なお、さっき題名の出たアルバム“rose quartzは、全体の傾向が『ストリート〜』に近く、やはり楽曲らのレベルはかなり高い。しかし同じく、アルバム的な完成度はもうチョイ、と自分は思う。

たとえば。その8曲め“misty”は、実に眠みのつよつよな、約11分間の長いトラック。そこはいいんだけれど、だがその次の曲で、いきなりチンドン屋さんのサックスがクソデケェ音で鳴りくさる、いやいやマジで。
そういう〈流れ〉のブチ切りと凸凹感が、ちょっとオレのフに落ちないんだよね。
かと思えば、そのまた次の10曲め“cinema”は、ややIDMめいたテンポの速い曲。けれどもそっちの紋切り型ではなく、実にふんいきが濃い。この楽曲はいい。

と、このように行ったり来たりの作品だと、それをご紹介している文章も行ったり来たりになって、オレが皆さんに対して申しわけないんだぜっ。
だがともかくも、このアコセフっち、かなり非凡なセンスを持っていることは確か。あともう少し、アルバムの構成とかを練ってくれるよう願いつつ、見守っていきましょう!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Hackosef, a Vaporwave creator from Marseille, France. He has been producing a lot of future funk since 2018, but he seems to have been less successful in the field.
And he returned to the street that can be called right path of Vaporwave and released the album “ストリート から 平和 (Peace from the Street)”, in January 2020. The style is Mallsoft and Late Night Lo-fi. This is a remarkable work.
The flow of the first three songs of that album is really wonderful, perfect. I was deeply moved and fascinated.
However, the flow after that is not very good. The standard of all the songs is high, but there are many feelings that the assembly as an album is bumpy. There is a lack of unity in the atmosphere.
Monsieur Hackosef, who seems to have a fairly extraordinary talent. I hope that his future works will be improved the point of assembling as an album.

お役立ちPC講座 - foobar2000の機能で、あらゆる楽曲らをヴェイパーウェイヴ風に鳴らす!

さあ〜っ!! この記事では、ちょっとしたお遊びの手順をご説明いたしちゃうよ!
そのお遊びとは、〈フリーで多機能なPC用音声プレーヤーであるfoobar2000を用いて、ありとあらゆる音楽をヴェイパーウェイヴ風に再生する〉!!

《もくじ》 | 1. こんなチン妙な思いつきにいたった理由はといえば | 2. foobar2000の導入と基本的運用まで | 3. 今回のテストに使う音楽ファイルの入手 | 4. 必要なFB2k用コンポーネントらの入手 | 5. FB2k用コンポーネントらのインストール | 6. ヴェイパー処理用・FB2k用コンポーネントらの設定 | 7. 即席ヴェイパーウェイヴの鑑賞、および結語

1. こんなチン妙な思いつきにいたった理由はといえば
画像:動いているfoobar2000の一例
動いているfoobar2000の一例(見かけは可変)

いままでこの場にて皆さんとご一緒に、《ヴェイパーウェイヴ》を愉しく鑑賞し、かつ、それがどういうものかを考察してきたよね。
そして得られた知見のひとつが、次のようなこと。

何らかの既成の楽曲に対し、自分の言う《ヴェイパー処理》を施せば、それの聞こえは、おおむねヴェイパーウェイヴ風になってしまう。
そしてその《ヴェイパー処理》とは、だいたい次の3つのプロセスである。

  1. 原曲のテンポとピッチを同時に下げる。目やすは30〜70%。
  2. イコライザー(EQ)で、高音と低音をゴソッと削る。
  3. オマケとして、リバーブやフェイズシフター等でフレイヴァリング。

もちろん、たったこれだけのことがヴェイパーの本質だとは考えられない。だがしかし、たったこれだけの処理でヴェイパーっぽく聞こえてくる、という事実もまたある。

そして。こういう処理を再現してみるために、高性能なフリーの音声編集ソフト《Audacity》を使うのはいい方法だ()。たぶん処理の質が高い。
けれど、ほとんどの処理がリアルタイムではできず、手間も時間もかかっちゃうんだよね。こっちサイドの目的が、〈ちょっとヴェイパー処理をしてみたい〉くらいだとすれば、その〈ちょっと〉の感覚に合わない。

そこでっ! 目をつけたのが、《foobar2000》(以下、FB2k)。これの追加コンポーネントを活用すれば、いちいち手間をかけずリアタイで連続的に、いろいろな楽曲をヴェイパー処理してそのサウンドをエンジョイできるんだ!!

んでは、そこまでの手順を以下に。

2. foobar2000の導入と基本的運用まで

FB2kをインストールし、一般的なフォーマットの音声ファイルを鳴らせる状態へ。そこまでの手順は、他サイトの記述を参考にしてたもれ。
いや、別に手抜きじゃない感じ。ひじょうに有名かつ人気のあるソフトなんで、キホンを分かりよく解説しているサイトがいっぱいあるっス。その中でもニホン語で包括的説明があるのは、ここ()、ここ()、あたりか。

ちなみにFB2kは基本的にウィンドウズ用ソフトだが、いまはMac用もある()。Macのことは知らないので確かなことは言えないが、まあ動くんじゃなかろうか。
また、《Wine》という補助ソフトを用いれば、Linuxでも運用可能。現に、うちではUbuntuなんだ。
けど後者について、小さな問題。FB2kの現在の最新バージョンが〈1.6.1〉なんだが、これは現在のWineでは動かないかも。〈1.5.x〉なら大丈夫。まあ細かいことっスね。

かつまた、この記事のPC画面キャプチャ画像ら、その文字やら何やらの見え方が美しくないのも、現在のWineの能力がイマイチなせいでありげ。いずれ改善ありたし!

3. 今回のテストに使う音楽ファイルの入手

もういまどきは、PCなんかで音楽を鳴らすにもストリーミングのみ、という方々がいそう。それはそれでいいが、しかし今回の実験には、ローカルの音楽ファイルが必要のよう。mp3、flac、wav、といった一般的フォーマットらで。
かつこの実験の素材にする音楽として、メロディックで形式重視でテンポがやや速いほうが、効果が分かりやすそうかも?

と考えたら、ユーロビートなんかいいかなと、つい思った。

ということでテキトーに探したので、お手元に何もなければ、マイリトルポニーのヤツをダウンロードしてね! これは購入価格を“$0”とすれば、無料にて入手可能。で、Zipアーカイブをササッと解凍しておじゃれ。

4. 必要なFB2k用コンポーネントらの入手

さて今回の実験ではFB2kに、次の2コのコンポーネントらを新たにインストールする。

  • SoundTouch DSP(ファイルの実体は、foo_dsp_soundtouch.dll)
  • Freeverb DSP(ファイルの実体は、foo_dsp_freeverb.dll)

本来の《DSP》とはリアルタイムで信号処理をする素子のことだが、その挙動をシミュレートするコンポーネントらなんだ。それぞれのあり場所は、ここ()、ここ()。

と、そこまではいいはずだが。しかし困る(かも知れない)のは、DLされるファイルらが、7zおよびRarという、ややレアな圧縮形式で固められていること。
これらの解凍が分からぬ、できぬ、という場合には、7-Zipアーカイバの導入がオススメ()。フリーでしかもオープンソースのソフトなので、完ペキと考えられる。

まあ。ホント言うと、〈固めるにしたって、一般的なPK-Zipで十分じゃろがい!〉とは思うんやけどなブヘヘヘヘ。

5. FB2k用コンポーネントらのインストール
画像:ブツが追加できたComponents欄
成功裡にブツらが追加できた《Components》欄

何やかやして、前記の2コの《.dll》ファイルらを入手できたとする。そうしたら、FB2kのインストールされたフォルダのサブフォルダ、《components》の中にそれらを置く。

だがその、FB2kのインスコされた場所が分からない、っていう人います? 自己判断でヘンなことをしてない限り、Winであれば、〈c:\Program Files\foobar2000\components〉のような構成になってると思うんだけど……。
これがUbuntuであれば、場所はたとえば、〈/home/マシン名/.wine/drive_c/Program Files (x86)/foobar2000/components/〉、みたいになる。が、Macのことは知らないのでスマン。

ここまでができたものとして、そこでFB2kを、(再)起動。そして〈Ctrl + P〉、あるいはプルダウンメニューから〈File → Preference〉。そうして設定画面を開いたら、左側のツリーのいちばん上、《Components》のところをクリック。

そして右側の欄の中を見ると、いま追加した《SoundTouch DSP》および《Freeverb DSP》、それらの名前が見えているのでは? いるはずだがっ!?

6. ヴェイパー処理用・FB2k用コンポーネントらの設定
画像:ブツらの追加された《DSP Manager》欄
ブツらの追加された《DSP Manager》欄

そこまではできたものとすれば、次には左側のツリーから、〈Playback → DSP Manager〉を開く。すると右側の欄が、《Active DSPs》、《Available DSPs》、という2コのワクに分かれているだろう。

そして何もしていない場合、《Active DSPs》のワクの中は空白であるはず。
いっぽう《Available DSPs》のワクの中には、何かがいっぱいある。その中の今回必要なものたちを、順番にダブルクリック、もしくは〈+〉の記号を1クリックして、《Active DSPs》のワクの中に追加する。

追加する順番は、《SoundTouch DSP》、《Equalizer》、《Freeverb DSP》。これは標準的なヴェイパー処理の、〈スローダウン → EQ → オマケにリバーブ〉、という順番に沿う。なお、EQはさいしょからインスコされているはず。
ただ、この順番決め等々は、あとからいくらでも変えられるので、いずれ自分がいいと思うようにしちゃえ。どうであれ、もとの音声ファイル自体は変更も加工もされないので、おきらくに進めよう。

そして、ワリにヴェイパーウェイヴっぽい音になるような、各コンポーネントの設定だぜ。設定するには、《Active DSPs》の各項目の右側の〈…〉をクリックする。

画像:《SoundTouch DSP》のヴェイパー的セッティング
《SoundTouch DSP》のヴェイパー的セッティング

まずさいしょ、スピード変更用の《SoundTouch DSP》。ピッチとテンポを独立に変更可能であるのがカシコいところなんだが、しかしヴェイパー的には、〈Rate adjust〉のところしか触らない。
この〈Rate adjust〉設定は、ピッチとテンポを同時に変更する。とりま、マイナス50%くらいの値が適切。
その下の〈Anti-alias Filter〉は、チェキすればデジタル的な歪みが減ってくれるはず。でも実は、あまり効果が分からない。続くEQ処理で、上下の周波数を削っているせいだろうか。
まあ、ここは気休めでオンにしとけば? たぶん、前記の〈独立に変更〉をなした場合によく効くのかな、と愚考。

次に《Equalizer》のグラフィックEQは、言うところの〈カマボコ型〉にセッティング()。シリアスな曲作りの場合には、もっと攻めたセッティングがイカす場合もありそうだが、でもいまはテスト(お遊び)なので、ややユルめの〈への字型〉に。

さいご《Freeverb DSP》のリバーブ設定はひとまず、すべて中央値にセットするのが無難()。ヘンなセッティングだとカンタンにインダスノイズ系になるので、ちょいと遊んでみてもいいっスよ!

7. 即席ヴェイパーウェイヴの鑑賞、および結語

と、作業らは以上で終了! そしていよいよ、さきに用意したポニーちゃんのユーロビートを再生すると──いや実は、再生しながらでも、セッティングを変更できるんだが──。
……ぬぅむ。もと曲のテンポが160BPMとかいうクソ速さだったりするので──たとえば一般的なハウスなら124BPMあたりなのに──、その半速にしたくらいでは、ヴェイパーそのものみたいな脱力感にはいたっていないかも?

むしろ、インダスっぽくなっているフシもなくはない。だがそれでも、2・3・5・7曲めあたりは、ちょっと感じが出てると考えられる。
なお、こうしてDSPらで処理されたサウンドを、ファイルに出力することもできる。その設定がまた複雑だが、しかしキホンはFB2k解説サイトらにも書かれている〈コンバート機能〉の応用。

他にいろいろと自分が再生してみて、意外にイイと思ったのは、ジャズやクラシックである素材ら。とくに、ハードバップ以前のノスタルジックなジャズあたりで、すごく鳴りがイイのがある。
また、オペラのよくある〈名アリア集〉とかもいい。「歌に生き愛に生き」、「復讐の炎は地獄のように燃え」、「イゾルデの愛の死」、みたいなアレらが。

たとえると、ジャズ/クラシック系音楽のこれでの再生により、《Caretaker》というダークアンビエントのヘンなアーティストがいるんだが()──そして万国の無法アングラ界では、そのヘンな人の評価がすごく高いんだが──。ややそのサウンドにも近い、心細い感じが得られるんだ。
その鳴り方はまるで、20世紀初頭の映画のサントラの想い出たちのような……。または、ゼンマイじかけの蓄音機やオルゴールらの、機構の動作がいまにも止まりそうという状態が、ずう〜っと続いているような……。

そして。
奇妙でチン妙なヴェイパーウェイヴのサウンドが、むしろ《自然》だと聞こえるようになってしまった、おかしい耳。それで聞いていると、ここまでに構築してきたシステムによるチン妙な鳴りが、やはり《自然》かのようにも聞こえてしまう。

で、それこれまでに追求されているヴェイパー処理とは、いったい《何》をなしているものなのだろうか? それは《音楽》を、変質的に愛おしみすぎているのか、あるいは単にじゅうりんしちゃっているのか?

└∀スタイル: James Brown Is Phased (2020) - ジェームズ某は荼毘に付したよ

James Brown Is Phased!

ジェームス・ブラウンは、位相になっています!

レイヴ!

ニュービート!

オールドスクール

ガバーハウス!(とはちょっと違うが)

ハードコア・テクノ〜っ!!

Dj Not Not: Dreamwave Plus (2020) - あなたの悪い噂を耳にしました。

《Dj Not Not》は、オクラホマ州タルサに在住か何か、というヴェイパーウェイヴ・クリエイター()。だとすると、J.J.ケイルとかリオン・ラッセルとかのアレですかね!?
いやそんなむかしのサザン(風)ロックとかは、別に関係なさそうだけど。

ともあれDJノット2さんは今2020年、ちょっと信頼性のあるレーベル《B O G U S // COLLECTIVE》からデビュー()。そして2作のアルバムを発表しており、1作めはスプリット作、続いたDreamwave Plus”が最新のもの。

彼のはどういうヴェイパーかというと、だいたいはクラシックスタイル+ちょっぴりレイトナイトのフレイヴァ、のような感じ()。
あわせて、たまにコスリ(スクラッチ)やMC-ingが入ったりするのは、芸名の一部の〈DJ〉であるところのアピールだろうか。かつ、リリース元のボーガス・レーベル自体にヒップホップ・テイストの侵蝕を自分は感じているので、これもその表れなのかな、とも。

そこいらまでは、まあ“ふつう”といえばそうなんだが。しかしこのDJノット2さんのサウンドの奇妙なやさしみに、自分はひかれるところがあるのだ。

というのも近ごろのヴェイパーって、聞きづらいのがけっこう多いなと、自分は感じてるんだよね。スタイルとしてはクラシカルなんだけど、しかし必要以上に音を荒らしてるのが、ワリと目だって。これは、同じボーガスから出ている作品らにもけっこう言える。

そういう中で、DJノット2さんのサウンドは、あるいは《無ぞうさ》にギリギリ近いところまでの、聞きやすさを供給しているかなと思う。

そのいちばん分かりやすい(かも知れない)例はアルバムの6曲め、“B A N A N A S”。これが実にあの、バ十十うマ「マイ・八ード・マ・ルーアー」(1987)を、丸ごとそっくりアレした楽曲なんだけど……。
それが実にその、〈ちょっと遅くしただけじゃろがい!〉、とも言いたくなるようなアレ。

追試からの知見によれば、もと曲のスピードを約70%まで落とすと、だいたいこの響きになる。多少だけEQの併用もありそう。で、ほんとうにようしゃなき原曲の丸使い。
だが、たんじゅんにそれで気持ちのいい音になっている。かつ、もと曲が《神》すぎることもあるので、これも大アリだと考えざるをえない。

と、いや、そんな無ぞうさなことばかりをしてるってワケでもなさそうだけど。ともかくそのように、ヘンに作りすぎずに気持ちいい音を出力しようみたいな姿勢、そこについ共感しちゃったんだよね!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Dj Not Not is a Vaporwave creator who seems to be from Tulsa, Oklahoma. Debuted in 2020 from the trusted label BOGUS // COLLECTIVE. He has released two albums, and “Dreamwave Plus” is the latest. The first work before that is a split work.
His work is like a classic style + a little Late-Night flava. At the same time, the occasional scratches and MC-ing are the appeal of being a part of the stage name “DJ”. Also, I feel the erosion of hip-hop taste in the release source BOGUS label itself, so I think this is also a manifestation of that.
By the way, what I sympathize with Dj Not Not is his attitude of pursuing a pleasant sound without fear of feeling almost casual.
For example, the sixth song on the album, “B A N A N A S”, is a song that is just a little slower version (think about 70% of the original song) of that 8nαnαrαmα “1 Hεαrd 4 яum0ur”. But it sounds good enough. This is fine.

SkyTwoHigh: 歌舞伎町冒険 (2020) - 狂った果実のヴェイパー残酷物語

《SkyTwoHigh》は、ニホンの“Takinoe”出身と称しているヴェイパーウェイヴ・クリエイター。たぶん今2020年にデビューし、すでに4作のアルバムを発表している()。
そしてご紹介する『歌舞伎町冒険』は、彼の2ndアルバムらしいもの。全9曲・約73分を収録。

それがご本人のBandcampページに加え、ちょっと注目されるべきレーベル《Geometric Lullaby》および《night coverage》らでも、あわせて公開されている。とすれば、〈シーンの話題作であろう〉くらいには言える気がするんだよね。

そして。さいしょに言っちゃったほうが親切かもと思うので、いきなり言うんだが。
このスカイ2ハイさんによるトラックらは、〈IDM(風)〜チルアウト〜アンビエントヴェイパー〉という幅の中、そのどこかに入るものたちだと思う。そして自分としては、後者寄りの遅くてフラットなサウンドに、ひかれるものがある。

ところで話がちょっと変わるようだが、ネット時代のいまどき、人々はどんどんせっかちになりつつある(らしい)。だからウェブの記事なんかにしても、いきなりさいしょの3行で、〈面白そう!?〉と思わせなければならない。
自分にしたってそういうことを、ぜんぜん意識していないワケでもない。──ところがご覧のありさまなんだよね!

さて話は戻って、『歌舞伎町冒険』なんだが。アルバムの先頭のトラック「風俗街」、そのスタイルがIDM(風)なんだけど、しかしあまりいい曲だとは思えないんだな。
なんか1990年代のそういう楽曲の、単に音質を悪くしただけ……みたいだし。〈だが、ともかく2曲めまでは聞いてみよう〉という当節まれなる根気のよさがなかったら、自分の中でのスカイ2ハイさんは、そこで終わっていたね!

そして、アルバムの2曲め「新宿ゴールデン街」の印象がよかったので、いまこういう記事になってるんだよね。危ないとこだったんだ。
だから、いますべてのプロデューサー各位に、オレは告げたい。アルバムの構成なんてもんは、必ずイチオシの楽曲をトップに置くべきだ、と。……ってまあ、“ふつう”の意見だけどさ。

で、再び言うけどスカイ2ハイのトラックたちは、響きがフラットでテンポが遅いほど、聞き味がいいと思う。4曲め「賭、女とタバコ」、6曲め「酒類夢」、あたりがとくにいい。今後ぜひ、そういう方向性での制作をキボンヌであ〜る。

さて、ここからはスカイ2ハイさんの作品たち、そのコンセプトみたいな話なんだが。

彼の既発のアルバム4コは、たぶん一種のシリーズ作であるもよう。かなりあやしいニホン語で書かれたBandcampページの自作説明とかを読むと、いちおうつながっていそうな私小説的ストーリーが、あるっぽい。
それが、どういう私小説かというと──。

北海道の滝上(Takinoe)町かと思われる、スキー場しかないようなイナカ町に生まれ育った青年。そのたいくつさに耐えかねて上京し、そして歌舞伎町の夜のみだらな歓楽に、ドォ〜ップリとハマりきってしまう。
かと思えば更生を思いたち、多少マトモそうな仕事についたりもする。けれど悪いスジからカネを借りていたせいで、ヤクザに追われるハメとなり、いまは絶体絶命(!)。
──そしてここまでの4作のアルバムたちは、そういう波乱万丈のイベントら、そのあいまに作られたものなんだとか(!!)。

とは、とんでもねェ……ヴェイパー界の葛西善蔵が、ここに出現しちまった。まあストーリー自体は善蔵風でもなくて、いわゆる太陽族映画》の系列みたいだけど。

けどいっぽうでは、その片手間の制作に、〈YAMAHA DX-7、ROLAND JUNO-60 と JUPITER 8 を使た。〉とか言ってくさるので、意外とヨユーな感じもある()。そんなイカしたヴィンテージシンセの実機らを3台も所有してるってんなら、アンタは持てる側の人間じゃねェかっつーの(オレらの基準では)。

いやまあ、そんなお話たちは、お話として受けとっておくとして──。ともかくもアーティストとして鮮烈な出だしを魅せつけてくれたスカイ2ハイ、その今後の動きに注目、っていう気はするんだよね!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
SkyTwoHigh is a Vaporwave creator who claims to be from “Takinoe” in Japan. Maybe he made his debut in 2020 and has already released four albums.
And his “歌舞伎町冒険 (Kabukicho Adventure)” is an album with a kind of story. It seems that the story tells that a young man born in a boring country town goes to Tokyo, which he longs for, and indulges in the night pleasures of the infamous Kabukicho.
But that said, when I checked the music side, the tracks by SkyTwoHigh are considered to fall somewhere within the range of “IDM (-oid) - Chillout - Ambient Vapor”.
And as I've heard, his works seem to be better the slower the tempo and the flatter the sound. I hope that his works will be extremely slow and flat in the future.