エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

Azuresands大麻: Neighbors (2017) - ハグしよう、他者たち & その《享楽のモード》らを

《Azuresands大麻を名のるヴェイパーウェイヴ・クリエイターは、カリフォルニア州サンディエゴ在住を主張()。そして2016年から活躍中。
その世代のヴェイパー者としては、けっこう大きめの支持を集めているほうだと考えられる。かつこの人は、やや大手のヴェイパー系レーベルである《power_lunch corporation》の主宰者でもあるっぽいと、自分は推測しておるのです()。

さて、このアジュアサンズ大麻さんによる音楽は……。すでに30作くらいのアルバムが出ているんだけど、その半分ほどを、ざっと聞いてみた印象……。

たぶん〈平凡なアメリカ〉の、生活およびビズネスのシーンらで、何となァ〜く聞こえてきそうなサウンドたちを、びみょうにグロテスクに崩して再現している感じ。
よって、通俗で凡庸でやや古い感じの一般ポップ・R&B・軽ジャズ等々の素材らが、そこへたち現れている。カッコよく言うなら《異化》されたカタチで、ね。
さらにそこへ随時、何らかの宣伝メッセージや美容体操のかけ声みたいのが挿入されてくるので、多少は《シグナルウェイヴ》的なところもある()。

あ、いや。しかしアメリカったって、アラスカもあればネヴァダ砂漠もあるのに、いったい何がそこで〈平凡〉だと言えるのだろうか?
けれど、その広大な国土の上に張り巡らされたメディアネットワークが、その多様性の上に、ヘンな均質のイメージを作っているかも知れない。そしてそういう《イメージ》、もしくはイデオロギーたちを、すくい上げていく作業なのかも知れない。

と、そういうコンセプト的な面は分かった気にもなるんだが、でも実を言えば──。
このアジュア大麻さん特有のザクッとしたサウンドの崩し方が、もうひとつ自分の心にフィットしてこないんだよね。スマン!

すなわち、かってなエゴイズムの希求だが、自分にとってのヴェイパーウェイヴは、もっとテンションの低いものであって欲しい風味。しかし大麻さんのは、フューチャーファンク()にギリギリ迫るくらいの、やや高めなテンションとテンポで展開しがち。
けれど、その特徴が逆に、アチラの本場ではウケているようにも思われる。であれば、いずれ自分にも、そのノリが分かる日が来るのかも。

ところでっ? このお人について調べようとして、〈え〜と名前が確か、“Azure 大麻”〉、とウロ憶えで検索してみたら、ちょっと目をひく記事らがヒットしてきたんだよね。
それは、〈あのマイクロソフト社が大麻ビジネス参入へ〉みたいな、やや近い過去のニュース。かつ、そのビズネスのソリューションに、《Azure》と呼ばれるテクノロジーが使用されそう、とかいう話()。

そして、このニュースが世に出たのが、2016年6月中旬のこと。すなわち、ちょうどオレらのMr.大麻つぁんが、おデビューなされた時期なんだ。

だとすると? 彼の《Azuresands大麻》という、ヘンで奇妙なバンド名は──いや、ヴェイパー界の内部的には、ものすごくヘンだというほどでもないが──この、〈あのM$社が大麻をどうこう〉っていう時事ネタに、ちなんでみたものなのだろうか。

それならそれでもよい、(かも知れぬ)として。だがいっぽう、そのM$社による大麻ビズネスは、それからどう展開したの?
が、どうもその話の続報は、いっこうに伝わってきてないっぽいんだよね。まるで〈蒸気のように〉、たち消えてしまったのか、あるいは地味に定着進行しているのか……。

古市憲寿氏「大麻は深刻な犯罪ではない」 俳優・伊勢谷友介の大麻所持で逮捕報道について 「とくダネ!さん、テレビ出していいの?」の声 - Tablo
古市憲寿氏(…)俳優・伊勢谷友介の大麻所持(…)「とくダネ!」(…) - Tablo / alt
マスゴミ出演の“逆張りコメンテイター”を、匿名の社会正義の戦士らが袋叩きィ〜

ところで。以下しばし、そういう過去の時事ネタに、いまの時事ネタで対抗してみるワケなんだけど。

2020年の9月8日から、その2日後の現在までのニッポンローカルで、〈俳優の伊勢谷友介容疑者 大麻取締法違反容疑で逮捕〉みたいなニュースが、ワリに話題()。
オレはこの俳優氏のことをほぼ知らないし──《タフスレ》の評判では、かなりいい役者らしいけど──、また自分が大麻吸引を娯しんだこともない。
後者を補足、むかしクラブっぽい場所にしげく出入りしてたころ、何度かそれを勧められたことはある。しかしそのつど、やんわりと辞退してきた。

つまり、ほとんど自分個人には関係のない話なんだ。痛くもカユくもねェぜ、みたいな。

けれど、それにしても思うんだよね。もうそろそろ、こんなささいなことで、必死コイて人を裁き罰するのは止めたらどうなのか、と。
つまり端的に言ってニホン国は、かなりの制限を設定した上にしても、大麻やMDMAくらいの使用を解禁していったほうがいいのではないか、と考える。

なぜ、そう考えるのか。その根拠のひとつを示せば、ジャック・ラカンテレヴィジオン』(1974)に、かくあり。

わたしたちの享楽が彷徨っているとき、それを位置づけることができるのは、〈他者〉だけです。しかし、それはわたしたちが享楽から引き離される限りにおいてです。ここから、幻想が、人が〈他者〉に関わる以前には未生であった幻想が生じるのです。
この〈他者〉を、それ自身の享楽の様式にまかせておくということは、わたしたちの様式を〈他者〉に押しつけたり、〈他者〉の様式を低開発と見做したりしないことで、初めて可能になるのでしょう。
そこへ、わたしたちの様式、つまりそれ以来、「極-楽」によってしか位置づけされず、またこれ以外にはもういい表わしようがない、わたしたちの様式の儚さをそこに加味するのであれば、わたしたちの略奪が身に纏っている偽りの博愛主義が長続きすることなど、どうして期待できるのでしょうか。

ラカンテレヴィジオン』
(訳・藤田&片山, 1992, 青土社 p.83-84)

……とは、いったい《何》が言われているのか、あまりオレにもよく分からないが。けれど、その前後とかの流れ──これは、民族差別や《南北》の分断対立といったテーマに関わっている言説らしい──をも、参考として読もうとすると。
われわれが、《他者の享楽のモード》らに対してなるべく寛容でないならば、いずれはエラいことになるだろう、くらいなお話を含んでいるかなァ、と。

だいたいオレらは、他人らに対して品行方正・人格高潔であることを、期待しすぎ&求めすぎなのでは? かついっぽうで、自分自身の《享楽のモード》らを、ヘンに絶対視&正当化しすぎなのでは?
そしてそこからの逸脱をオレたちは、ムヤミと過剰に責めて罰しようとしてはいないだろうか? 心の底からあふれ出る、イノセントで熱血のピュアな正義感と道義心、それらの高ぶりにまかせきって!

てのを、具体的な方策に言い換えて──。飲酒・喫煙・風俗営業・ギャンブル等々のようなお娯しみらが、ほどほどに許容されている社会であれば、大麻くらいなソフトドラッグの類という娯楽も、ほどほどに許容されていくべきなのでは?

そもそもの話、こういうことが話題になっているニッポンは、民度というものがやたらに高いお国だと、崇高なる自民党の大臣サマが国会でおおせになったばかり()。
その《民度》とは何か、オレは知らないが、にしてもこれは圧倒的なド正論に違ェねェ。

ゆえに、人それぞれの《享楽のモード》の選択に関しても、そういう《民度》の高さにまかせれば、いずれほどほどのところに落ち着くであろう。──という、正しさをきわめた観測が得られるんだよね!

……で、そうしてさいごにこのお話は、意外とさいしょの、Azuresands大麻さんのことに戻っていくのです。

その大麻さんの、かなり評価の高いらしいアルバム、“Neighbors”(2017)。そのタイトルとカバーアートらが、たぶん指し示している、黒と白で女と男である多様な人々の、《隣人愛》という含意。
いや別に《愛》とまでを、オレらはアレせんでもイイけれど。にしても、《異なるもの》としての隣人たち──まず、その存在を、受け容れてイカなくてはならんのでは、と思うんだ。

……ただしっ! その《隣人愛》を示唆してるっぽい記号らが、このアルバムに頻出していること、それは実に確かなんだけれど──。たとえば楽曲らのタイトルにも、「ようこそ」、「敵をハグしよう」、「受容」、「すべての人が勝者」、等々とあり──。
けれど、何しろヴェイパーウェイヴという陰湿邪悪な世界のことなので、どこまでホンキでそんなことが言われてんのか? あるいは、ひでェ皮肉やシニシズムとしての、〈偽りの博愛主義〉への言及だったり? さもなくば、《両義性》みたいなところの狙い?

イヤハヤ、そういうとこまでは、さすがのヴェイパー通のオレちゃんにも見当がつかないんだよね! ギャハハハハ〜。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Azuresands大麻 (Azuresands Cannabis) is a Vaporwave creator who claims to live in San Diego, California. He has been active since 2016 and has already released more than 30 albums.
I feel like that, his music recreates the sounds that somehow seem to be heard in the life and business scenes of “ordinary America”, subtly grotesque.
Therefore, popular and mediocre general pop, R&B, light jazz, and other materials appear there in a “alienation” form, to put it in a cool way. In addition, there is some kind of promotional message or something like a calisthenics call, so it's a bit like a Signalwave.
So, I feel like I understand the conceptual part of Mr. Cannabis. However, a listener called me wants this Cannabis sounds to be even lower and looser at their tension. I feel like that.