ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

Reality Persons: Good Night, Hong Kong (2018) - 《アポなし》で凸撃しちゃうも(いちおう)可

オレらのヴェイパーウェイヴとかいうアレも、実に俗な音楽ではありますが。いっぽうネットの俗な英語では、近ごろアポストロフィが省略されてしまうことが多い、と指摘されているみたい()。
すると、たとえば懐かしい映画のタイトルでいうと、“Its Alive”とか“Andy Warhols Bad”とかになっちゃうらしく。それはそれは。

だがしかしっ? いったんは「鼻白む」みたいなポーズを示したが、でもちょっと調べたら、これ意外にめんどくさい問題のよう。

まず、記号としてのアポストロフィと“シングルクォート”、これらは別のものということを、オレみたいな一般ピーポーは意識していない。ほんとうは書き分けなければならない。
けれど、両者の見た目が似てすぎる。かつ、正しいアポの出し方が分からない、もしくはめんどくさい。

ゆえに自分も生涯ここまで、アポの代わりにシングルクォートを書いてゴマかしてきたのだった。いいんスかコレ。
そこでひとつ、思い出したが。ヨコ文字のホムペを見ると文中で、みょうに大きなアポストロフィが使われていることがあり、「ヘンだな?」と思ってきたけれど。しかしおそらく、そのほうが誠実な表記だったのかと考えられる。

と、こうして自分の不誠実を自覚してしまうと、「アポなんてマンドクサ、略しておk」という態度を責める気がなくなり。
かつ、アポとシングルクォートの区別がついてないレベルのテクストは、システム関係の問題、SEO的弱点(!?)──みたくなることも、なくはないとかで。

そんなこんなでファミレスのデニーズあたりが、いずれアポを省略し、屋号を“Dennys”にあらためたとしても、あまり驚くことはなさげ。
すでにヨコ文字の世界では、そういうのがトレンドらしいんだ。オレら人間ふぜいはシステムさまに迎合していくべきなんだ、“すべて”において。

そして、ここからやっとヴェイパーウェイヴの話なんだが(っ!)。たぶんメキシコの人らしいヴェイパー・クリエイターの名前の表記が、《Reality Persons》《Reality Person’s》の間で揺れているけど、でもそれもトレンドなんで、〈悔しいだろうが仕方ないんだ〉。

つまりここでご紹介したい品物、そのリアリティ・パースンズ氏のアルバム“Good Night, Hong Kong”(2018)なんだが。これはBandcampで2ヶ所にソースがあって、それぞれで名前にアポが無と有なんだよね。
オレの推理だと、本人的にはアポありのものが、他者らによって省略されている気配。たぶん《System Alpha 69》が、パースンズ氏の別名でありホームなのでは、という推測にもとづいて()。

が、アポの件はともかく、音楽を聞くと。今アルバムはホンコンの雨の夜、そのアトモスフィアの描写であるもよう。
モヤっとしたサウンドの背景で、雨のべしょべしょ効果音が高く低く、アタマからさいごまで鳴り続けている。ところでカバーの写真がニホンの夜景としか思えないが、まあそれは見すごしておくとして。

そして、ここからが大変なこと。このアルバムは、《2814》によるアンビエント・ヴェイパーの名作“Rain Temple”(2016)を、パロっているとか、または対抗しているものか、とオレには思えるのだった。
雨の効果音の多用もあるし、しかもホンコンの側の3曲めが、ズバリ「雨寺」というタイトル(!)。もはやこれでは、言い逃れなど不可能だぞェ。

しかも大ビックリなのは、いまの気分だと、ホンコンのほうに引き込まれるものがあるんだよね。オレはね。
ちょっとりっぱに《音楽的》に、作り込みすぎた感のある“Rain Temple”と違い、ホンコンのほうは、何かモヤ〜っとした音を流し、アンニュイなムードを作っているだけ。そして、それがいい感じ。《表現》なんていうつまらない行為から、さわやかに撤退しているのが、いさぎよい。

──と、いうわけで。名前の中のアポストロフィがどうなるかはさておくも、アンビ系ヴェイパーのリアリティ・パースンズさんは注目、と記憶したんだよね。まあ、先日の記事の《キューブパンク》にも出てた人なんだけどね()。

【追記・2020/06/10】この記事のコメント欄でご教示いただいたわけだが、リアリティ・パースンズさんは旧のメイン芸名《System Alpha 69》を廃止し、これから《COMPLΣX MATHΣMATICS》として活動なされていくよし。
これにともなってSA69のBandcampページもいずれ廃止、コンプレックス・マセマティックスをよろちくびー、というお話でしたのでした()。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Ambient-Vaper music album “Good Night, Hong Kong” by Reality Person's. This work is similar in structure and atmosphere to the famous 2814 masterpiece “Rain Temple”.
The difference, however, is that “Rain Temple” is quite musical, whereas “Good Night Hong Kong” is devoted to a vague description of the atmosphere.
And now, surprisingly, I prefer “Hong Kong”.