エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

V4P0RH34D: Escape From Vaporwave (2018) - お気に召すまま、おサイケにエスケイプ

ヴェイプ、ヴェイパー、ヴェイピスト! さて、在フランスと称するVaporwave関係のレーベル《L33K5P1N 84574RD5》)、これは“LEEKSPIN BASTARDS”と読ませたいのだろうか、なぜかいま自分はこの連中に、少し興味を抱いているのだけど。

そのL33K5P1N 84574RD5のアルバム・ラインナップの中で、ちょっと目立っているのが《V4P0RH34D》(つまりVAPORHEAD)というアーティスト。今2018年に5〜6枚ものフルアルバムをリリースしており、かつその曲名・カバーアートなどに「いかにも」というヴェイパー色(もしくは独特のくどさ)あり。それでいったい、どのようなサウンドなのかと聞いてみると。

…これが何と、われわれが思うようなヴェイパーウェイヴではなくて、サイケ・スペース・インスト・ヘヴィーロックの電脳版、みたいなものなのだった。

1960年代末くらいの大むかしから現在まで、果てしなく単調なエイトビートにのせて、深くエコーのかかったファズギターが永遠にブリブリと鳴っているようなおサイケロックを1曲あたり10分から30分間くらいも延々と演っている、みたいなバンドは常に存在しているのだが――いや実は、テクノの元祖である巨頭・クラフトワークにも、その手のバンドの末裔みたいな性格が意外とある――このV4P0RH34Dは、その現代版のひとつなのだろうか。
かつこういう音楽はその尺の長さにも意味があり、というのもおそらく大麻LSDなどでキマっているリスナーらには、30分くらいもの演奏時間がたったの3分ほどにも思えたりする時間感覚の変容、そのあたりがなぜか面白いらしい。よってV4P0RH34Dの楽曲らも、いちばん短い部類で約6分、長ければ60分弱(!)と、かな〜りの長大さを誇っている。むしろこの場合は肉体の力で演奏していないだけに、仮に1曲の尺が2時間以上だとしてもへっちゃらだい、というところがありそう。

薔薇の香りとやすらぎを、ここで貴方に…

で、このV4P0RH34Dの作品ら、何らかの生演奏のサンプルをコンピュータで加工編集したものではありそうなのだけど、しかしそうかんたんに作り方が透けて見えるほどのイージーなでっち上げではなさげ。まっとうな生演奏ではなさそうとは分かるが、しかしただの打ち込みのようにも聞こえない。
そういうところ、意外によくできているのかも知れない。仮に「サイケ・スペース・インスト・ヘヴィーロックの電脳版」を聞きたいという人がいたら、けっこうアピールするのではなかろうか?

ただし、そういう人らがそんなにはめったにいない、という問題はありそうだ。かつこれを、Vaporwaveそのものであるみたいな売り込み方はどうなのか…てか、「ヴェイパーからのエスケイプ」というアルバムタイトルは、このさい意味をなしているのだろうか…またカバーアートあたりのキツいアニメ臭と楽曲らの内容はマッチしているか…等々と疑問はつきないが、しかしともかく世の中は広いな、とは思ったのだった。