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ツジトモ/綱本将也「GIANT KILLING - ジャイアントキリング」 - 小雪の舞い散る季節に思い出す《あんなこと》、とは?

サッカーの話、この12月5日、自分がちょっと応援している浦和レッドダイヤモンズが、鹿島アントラーズを倒し、天皇杯の決勝戦に進出。そこでひとつ、思い出したメモリーが…。

…まんがとサッカーのどちらかに興味をお持ちである限り、ツジトモ/綱本将也GIANT KILLING - ジャイアントキリング(2007年よりモーニング掲載中)という作品をご存じない方は、めったにおられまい。すでに単行本が第49巻までも出ていて、しかも作中では時間がまだ1年も経っていない(!!)、というかなりなしろもので、こう書くと「まさか!」という感じだが確かそうのはずで、お話の初期を見ていたころには、こうなるなんて夢にも…。

という作品の現況はともかく、この「ジャイキリ」の初期を見ていたころ、具体的には単行本(モーニングKC)の第1巻に、自分にとってはきわめて印象深いエピソードがあった。

ツジトモ/綱本将也GIANT KILLING - ジャイアントキリング」第7話より ―
今作のいちおうのヒロインであるような《有里(ゆり)》は、弱小サッカークラブETU(イースト・トーキョー・ユナイテッド)の広報担当者。しかし新シーズンの開幕を前に仕事で張り切りすぎ、過労と診断され、早退と休養を命じられる。
そこで、しぶしぶながらも彼女は職場を離れ、家路をたどる。するとたそがれの街には小雪が舞い散り、恋人たちはそのロマンチックなムードに酔っている風。
と、そこで有里がふと思い出したのは…。もう十年ほども前、幼いころから彼女の応援するETUが、このような雪降る中での激戦を大逆転で制し、《天宮杯》の準々決勝に進出した《伝説の一戦》のことなのだった。

このエピソードを初めて読んだとき、いいトシして思わずダラダラと涙を流してしまったことを告白しなければならない。サッカーをとくに好きでない人、また応援しているクラブのない人には、こんな気持ちは分からないのではないかと思うが…。

そもそも天皇杯(作中では天宮杯)の、優勝か準優勝ならまだしも、準々決勝に進出したくらいがビッグなメモリーって何ごと? だがしかし、全国大会であればベスト8進出あたりでも《快挙》となってしまうような弱小のクラブは数多く存在し、そしてそれを応援し、その闘いのひとつひとつを心に刻んでいるサポーターたちがいるのだ。
そして、そんな《われわれ》の気持ちをくみとってくれるサッカーまんがに、ここで初めて出遭うことができた。自分はそのように感じたのだった。

んまあサッカーファンの気持ちなんてほんとうに特殊なもので、日本だけのこと(かも)だが常人らが浮かれているクリスマスシーズン、《自分のチーム》が天皇杯で勝ち残っていれば、心はいまだ戦場に在って、浮かれるどころではない。
だがいっぽう、もし敗退していればそれはもちろんつまらなく、浮いた気分になどなりにくい。あの華やかな電飾やツリー等を眺めながら、「勝っていればなあ…」と、はたにはぜんぜん意味不明なため息をつくのだ。今年は“うち”が勝っているので、それはないが!

といったことを思い出したわけだが、しかし近ごろの「ジャイキリ」は…。みんなが大好きな代表サッカーのお話ばっかりで、本来のヒーローであるETU監督《達海》の活躍シーンもめっきりと減少。そのタイトルも、「代表サッカー選手・椿くん物語」とでも変えたほうがいんじゃないの、なんて思うけど…。まあ、多くの人がそれを娯しんでおられるならば…。