エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

secretflowers: mirage (2020) - フェイク疑惑のかたわらで、なごむ

《secretflowers》──シークレットフラワーズは、米フロリダ州オーランドに在住を申し立てているヴェイパーウェイヴ・クリエイターです。2019年から活躍中のようです()。

2020年末までに、このセク・フラさんは、5作のアルバム(EPを含む)を発表しています。
その作風は、あわやシリアスなアンビエントなのでもあろうか──と理解してしまいそうな、静ひつなドローン系です。

《ドローン系アンビエント》のようなものを、わりに聞きこんでいるつもりの私には、セク・フラさんによるトラックらが、かなりまっとうに聞こえてしまうのがふしぎです。
たとえば、ニッポンの誇るチヘイ・ハタケヤマ氏の諸作品に対しても()、そう劣ったものではないように聞こえています。ふしぎにも。

ところで。

数日ほど前、移動中に空き時間があったので図書館に寄って、そこで私は雑誌『ユリイカ』のヴェイパーウェイヴ特集号(2019年12月)を、ななめ読みしました。
200ページくらいのものを約15分間で眺めきったのですが、その中で印象的だったのは、〈偽アンビエントの告発〉というトピックの存在でした。いや、正しい言い方は、〈擬似アンビエント〉だったかも知れません。

それは、こういうことです。半分くらいは私の意見がまぎれ込んでいそうですが──。

本来の正しい《アンビエント・ミュージック》とは、ブライアン・イーノ師の提唱による、崇高さをきわめたコンセプトである()。それは、それ以前からあるBGMやイージーリスニングらに、対抗しているものである。
しかるに現今、というか1980年代末くらいからずっと、アンビエントのふんいきだけをなぞったイージーリスニングらが、ニューエイジ/ヒーリング/メディテーション/チルアウト等々々として、一緒くたに流通をキメくさっている。実にけしからぬ。

これはまさしくわが意を得たり的で、〈もっと言ってください、どうか!〉と、私は心で叫びました。図書館の椅子の上で。
ただし私は(おそらくご存じのように)、《スーパーのBGMみたいな音楽》を愛し、そして大いに振興していく立場です。ですから、フェイクであるというだけで、その作品らの価値を否定することはいたしませんです。

かつ。そうだとしたらどうすべきか、またそのお話とヴェイパーウェイヴとの関係は──、といった論点に、そのテクストが、およんでいたのかどうかを思い出せないことが、いまひじょうに遺憾です。

そうして私たちのヴェイパーウェイヴは、フェイクでありキッチュであることを隠していないどころか、I字開脚くらいのいきおいでそのことに、大きく開きなおっています。実にけしからぬ悪ですね。

ところでセク・フラさんの作品らを聞いていると、これもまたその《偽アンビエント》なのか、あるいは意外とそうでもないのか、という疑問がわき起こってきます。

しかし、ちょっとそれは分かりません(!)。

かなりちゃんとしたアンビエントのように聞こえなくもないが、しかしセク・フラさんは、どう見てもみずからヴェイパーのシーンの中に身を置いている。先日お伝えしたヴェイパーのオンライン・フェスティバル《Late Night Lights》にも参加()、ライブ出演しています()。

はっきりしていることは、そこまでです。

ことによったらセク・フラさんによるトラックたちは、意外とひどい恥ずべき手法で作られているのかも、知れません。たとえばまっとうなドローン系作品たちの、スピードを単に落としているだけ、のような。
そうでもなければ《ヴェ〜イパァ〜》という感じがしないのですが、〈まあそれならそれでもいいし〉と私が考えているのは、言うまでもなさそうなことでしょう。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
secretflowers is a Vaporwave creator who claims to live in Orlando, Florida. It seems to be active from 2019.
By the end of 2020, Sec-Flo has released five albums (including EPs). The style is a quiet-tranquil-calm Drone that seems to be understood as if it's a serious Ambient music. It's very pleasant music.

And for me, who intends to listen to music like "Drone Ambient" rather enthusiastically, it's strange that the tracks by Mr. Sec-Flo sound pretty straightforward.
In other words, it sounds like not so inferior to the works of Chihei Hatakeyama, who is proud of Japan, for example, mysteriously.

Why is this part of our evil-vicious-perverted Vaporwave?

Perhaps the tracks by Sec-Flo are made in a surprisingly terrible and shameful way. For example, it's just slowing down the decent Drone works.
Otherwise, it doesn't feel like "Vaaapoorrr", but it goes without saying that I think "Well, that's fine!".

言論・思想・報道・表現、そしてヴェイパーウェイヴの自由に加担したくあります。

どういうところか私はよく知らないのですが、《Pornhub》というウェブサイトが人権ゴロか何かの追い込みを受けて弱っている、と伝えられています。
(ご注意:未成年の人は、見に行ってはならないところらしいです!)

思想・言論・報道・表現の自由に加担しようとする私どもは、何となくこのハブを応援したい感じです。
ということで何となく、このポルンハブのロゴのパロディを作成しました。どういう意味で応援になっているのかは、分かりません?

それに、作成と言いましても。

さいしょ、画像ソフトでやりましょうかとした。しかし、スクリプトか何かで、かんたんにこのパロディロゴを作れるサイトが見つかりました()。

さすがはミーム大国のアメリカ(か、どこか)です!

しかし、まあこんな……。ポルンハブも気の毒ではあるのですが、そのいっぽうではイランで12月12日、反体制ジャーナリストのルホラー・ザム氏が死刑を執行されています()。
これに私は、自分の一部分が殺されたような気がしました。大げさですが!

何を言い、何をしたらいいのでしょう? 私に分かっていることは、これらを放置した場合、いずれ私たちのヴェイパーウェイヴが攻撃をこうむるのは確実、ということです。
それも、そう遠くはないうちに──。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
I don't know much about it, but it is reported that a website called "Pornhub" has been weakened by human rights gangs or something.
(Warning: minors are not allowed to visit this hub)

Freedom of thought, speech, press, and expression. We, who are trying to be part of them, feel like supporting this hub somehow.
So, I made a parody of the Pornhub logo. I don't know what it's supposed to support?

And when I say created, I mean ...

At first, I tried to do it with image software. However, I found a site where you can easily create this parody logo with a script or something.

That's America (or somewhere else), the meme superpower!

But, well, such is ... I feel sorry for Pornhub, but on the other hand, on December 12, the dissident journalist Ruhollah Zam was executed in Iran.
This made me feel as if a part of me had been killed. I am exaggerating!

What can we say and do? What I do know is that if we let these things go, our Vaporwave will eventually come under attack.
And it won't be long before they do.

ROMBREAKER: Summer Pain (2020) - 夏はすべてを与え、そして奪う。

《ROMBREAKER》、ロムブレイカーは、スイスの人だと称しているヴェイパーウェイヴ・クリエイターです。おそらく2017年から活動中のようです()。

この2020年にアルバムを7コ発表するなど、ロムブレイカーさんは生産性の高いアーティストです。
それらの中にはIDM風やチルハウス的なスタイルのものがありますが、主要部はクラシックヴェイパーです()。じっさいその部分が、彼のもっとも美味なスイートスポットだと考えられます。

そして、“Summer Pain”はロムブレイカーさんの、最新に近いアルバムです。全6曲・約35分を収録しています。
そして彼が崇拝している《haircuts for men》に近いスタイルで、そこには、夏の日の想い出たちと、そして苦い悔恨が表現されています。秀作です!

ところでこのロムブレイカーさんの作品らには、少しまた別の特徴があります。
それは、〈他のヴェイパー音楽に比較し、なぜか音が大きく聞こえる〉ということです。

ROMBREAKER: The Leftover (2019) - Bandcamp
ROMBREAKER: The Leftover (2019) - Bandcamp
↑第4曲の視覚化。凸凹のない海苔波形です!

分析してみたところ、彼の作品らは、マスタリングあたりの段階でコンプレッサー等がきつめにかけられているようです。通常のヴェイパー音楽家たちは、ここまで強い処理をすることが多くありません。
また、この処理が極端さをきわめると、俗に《海苔波形》と呼ばれるサウンドができてしまうことを、多くの皆さんはご存じでしょう()。じっさいロムブレイカーさんの昨年のアルバム“The Leftover”は、みごとな海苔波形のトラックらを含んでいます。

そして、海苔波形によって象徴される《音圧戦争》の悪評を、多くの皆さんはご存じでしょう。じっさい“The Leftover”はやりすぎで、少々気分の悪いサウンドになっていますかも知れません。

しかしその極端さを克服した上での、ロムブレイカーさんの現在です。彼のことしのリリースらは、不自然にならない限りで音圧を増やすことに成功していると考えられます。
じっさい巧妙で、どういう処理をしているのか尋ねて、私が参考にしたいくらいです!(笑い)

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
ROMBREAKER is a Vaporwave creator who claims to be a Swiss person. Probably he has been active since 2017.

Rombreaker is a highly productive artist, with seven albums released in 2020.
Some of them are IDM-style or Chillhouse-style, but the main part is the Classic Vapor. In fact, that part is considered to be his most delicious sweet spot.

And “Summer Pain” is Rombreaker's latest album. Contains a total of 6 songs, about 35 minutes.
And in a style similar to haircuts for men he worships, it expresses the memories of summer days and bitter regrets. It's an excellent work!

By the way, the works by Rombreaker have a little different characteristics.
That is, “For some reason, the sound sounds louder than other Vapor music”.

When I analyzed it, it seems that his tracks are processed quite strongly by a compressor etc. at the stage of mastering. Ordinary Vaporwave musicians don't often do this hard.

Also, many of you know that if those processes become extreme, it will result in a tragic battle commonly referred to as the "Loudness War". In fact, his 2019 album, “The Leftover”, may sound a bit sick because it's too extreme.

However, after overcoming that extreme, Rombreaker is now. His latest releases are believed to have succeeded in increasing loudness as long as they don't sound unnatural.
It's really clever, and I'd like to ask him how to and use it as a reference! (Laugh)

2nd cłαss mαidәns: パラドキシ力ル hearꚍꚍhrob (2020) - 見つめあいたい

私は毎日あなたの夢をみています。
この現実をねじ曲げて、あなたが私を愛するようにしたいと思います。

I dream of you every day. I want to twist this reality and make you love me.
Made up a Vaporwave track from a song of a forgotten idol group. (○゚ε^○)V peace!

かわいい(らしい)アイドルグループの唄から。なお、このトラックはテンポが80BPMなので、オレのアレしてる中では軽快さがきわまり、お調子のいい曲であるハズっス!

まあそれでも素材のスピードを、60%くらいまで、ズズズ〜イと落としとるんやけどなブヘヘヘヘ。

ところでヘンなこと言いますが、シロートくさい少女たちのコーラス、って素材に興味があるんだ。
たとえば、女子校の朝礼の校歌斉唱みたいな響きが好きなんだよね。そのお話は、またいずれしてしまうことになりそうだけど。
そしてコレのもと曲も、ちょっとソレ風なので悦びがあった!

This Heat: S.T. (1979), Live 80/81 (2006) - AからZに移動しました

むかしのレコードの〈ジャケ買い〉なんて、たぶん失敗してる例のほうがぜんぜん多いんだけど。
しかしアタリを引いたときの悦びがあまりに大きすぎて、いま言う《認知のひずみ》を生じさしている、と考えられる。〈ジャケ買いはアリなのだ!〉、とね。

そして、ジス・ヒートThis Heat)のセルフタイトルの1stアルバムは、自分にとってはその最大のアタリであり続けるんだろう。
それをレコ屋で見た瞬間、〈ふんいき的に、何かキテそう!〉と即断し、とくにどういうものか知らないまま買ってしまったものだったが。

それが……。

いちおうご説明するとジス・ヒートは、1976-82年に活動していたイングランドの3人組バンド。そのメンバーたちは、プログレというかアートロックみたいな方面で、その前から多少活躍してたような連中だった()。
それが当時のパンクロックの《熱》にあてられてか、パンク的な意識と衝動をベースとしつつ、それを超えたふかしぎな未曾有のポップの領域に踏み込んでいったんだ。
その楽曲らがおかしいだけでなく、おそらくジャマイカのダブの影響により、非常識なエンジニアリングの乱用悪用におよんでいるところも、その大きな特徴。

そしてバンド名が“Heat”と熱のあることを言いながら、そのサウンド“Icy”──氷のよう、という表現が定着した。そもそもグループの使用していたスタジオ(どうせ自宅の地下室か何か)が、〈コールド・ストレージ/冷たい物置〉と命名されていた。

まったくもって名づけのしようがない、独自で固有の《ポップ》。これは一種の形容矛盾だろう。
なぜって《ポップ》は、キッチュであってミミックだから。似たようなものが大量生産されるからこそ、ポップはポップなんだ。

だのに、ジス・ヒートの音楽をサイコーの意味での《ポップ》だと呼んでおきたいのは、受け手の幻想と共犯関係をつないでいこうとするような甘さが、ぜんぜんないから、とも言えるし。
またユニークである《表現》が、たちまちその場で凍りついた、外在的でモノ的である《ポップイメージ》へと変わりゆくような離れワザを魅せたから、とも言えるし。

AからXに移動しました
この福祉国家は私たちの進歩です
そのすべてのサイズは私たちを運びます
より多くはより良く、それは私たちが望むものです
私たちのエネルギーは無限大です
必要なときにそこにあります
私たちは仕事に男性を持っています


AからZに移動しました
この核保有国は私たちの終焉です
ピーターを飛ばし、ポールを隠します
地球が燃え、粉々になり、そして死ぬのを誰が見ることができますか?
フェイルセーフ、絶対確実、私たちは以前にそれを聞いたことがあります
良識が必要です
男性が仕事に就いていることを願いましょう


This Heat “A New Kind of Water” (1981) 〜

ジス・ヒートは、それ自体が矛盾だった。ヒートかつコールドだった。不安定さをきわめた量子状態みたいなものだったんだろうか。そういうワケで、このバンドは短命であり、本格的なアルバムは2コしか残していない。
そんなだったジス・ヒートに対し、そこからの影響を指摘されるソニック・ユースあたりは、きわめて安定した前衛ちっくなポップソングらの量産体制を築いている。これが通常一般のポップ営業活動、ジ・エンターテインメント。それはそれでいい。

そういえば。付言しとくとジス・ヒートの時代に出てきたキーワードオルタナティヴ》、これは本来、ロックから出てきてロックから出て行く、それを棄却する、そういうムーブメントを言った。
そういう勢力の筆頭がもちろんジス・ヒート、そしてスロッビング・グリッスル、パブリック・イメージス、レインコーツあたりだっただろう。

という用語だった《オルタナティヴ》が、グランジ流行時代くらいから、〈ロック業界の内部のちょっと対抗的な分子〉くらいの意味に矮小化されて用いられ、ビックリしたさ。
ていうか正直、〈ムカつくんスけど〉とも思ったが。しかしそれさえすでに大むかしだし、いまはもうどうでもいいよね!

あっ。最小限の説明を、というつもりだったが、けっこう語ってしまいまんたった。
ともあれそのジス・ヒートも、現在はBandcampに出ている“こっち側”の一員なので、そのことを大いにPRしたかったんだ。

けれど小声で言うんだが、本来メインの作品である1stアルバムThis Heat、および2ndの“Deceit”──、それらの音質がもうちょっとかと……。ビニール盤で聞きこみすぎた音源のデジタル版はどうしても、というオレ個人の事情かもだけど。
逆にライブの“Live 80/81”、これが、かなりローファイだがアナログ由来の音圧感が保たれたサウンドで、すごくいい。推し!

そして圧倒的な創造性にあふれたジス・ヒート──何しろ彼らの音楽は〈クリシェ〉ってものをぜんぜん含有していない──が、どうこうののち。いま自分が、ややムキになってまで〈創造〉を否定しているかのようなヴェイパーウェイヴへと、ヘンにアツくなっている。
それぞれは、ともにこの文明への懐疑を共有しながら、そして《ポップ》をはさんで対極的な攻略法を構えている。